コンサルタントは、税務署へ開業届を提出すれば、個人事業主として事業を始められます。特別な資格や大きな初期投資は必要ありません。
ただし、安定して活動するには、青色申告の申請、事業用口座の準備、業務委託契約の確認、案件獲得経路の確保などが必要です。
本記事では、フリーコンサルとして独立するまでの手順を、実務に沿って解説します。

個人でもコンサルティング事業を始められる?
コンサルティングサービスというと、大手コンサルティングファームを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし近年では、個人で独立し、フリーランスとして活躍するコンサルタントが増えています。
DX推進や生成AI活用、ERP導入、PMO、新規事業開発など、専門性の高い人材をプロジェクト単位で活用する企業が増えており、大手企業でもフリーランスのコンサルタントを積極的に活用するケースが珍しくなくなりました。また、2024年11月には「フリーランス法」が施行されるなど、フリーランスが安心して働ける環境整備も進んでいます。
個人でコンサルティング事業を始める方法は、大きく分けて「個人事業主として開業する方法」と「法人を設立して事業を行う方法」の2つがあります。
初期費用や手続きを抑えてスタートしたい場合は個人事業主として開業し、売上や事業規模の拡大に合わせて法人化するケースが一般的です。一方で、取引先の要件や事業戦略によっては、独立当初から法人を設立するケースもあります。
関連記事:フリーランスコンサルタントの独立準備は何が必要?貯金は?年収は?
コンサルティング業を営む個人事業主と法人の違い
コンサルティング業を営む方法には、個人事業主と法人の2つがあるとご紹介しました。では、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、初期投資や税金の手続きなど、5つの項目に分けて詳しく説明していきます。
違い①初期投資
個人事業主と法人では、初期投資が異なります。個人であれば、事務所を持つ必要もなく、設備も最低限の準備ができていれば良いため、初期費用は安く済ませられます。開業に必要な手続きも、税務署に開業届を出すだけのため、費用はかかりません。
法人の場合は、設備投資以外にもさまざまな費用がかかります。法人でかかる費用は、以下の通りです。
- 設備投資
- 資本金
- 登記にかかる費用(株式会社で約20万〜25万円、合同会社で約6万〜10万円)
資本金は、会社法上では1円以上と定められていますが、会社の信用度にも関わるため、ある程度は必要です。具体的には、会社設立から3ヵ月は事業が続けられる程度には確保しておくとよいでしょう。
また、上記に挙げた以外にも、会社印の購入や、社会保険への加入なども必須事項です。費用以外にも、登記申請書や発起人の決定書など、会社設立のために提出しなければならない書類が複数あり、個人事業主よりも手続きが煩雑です。
違い②税金の手続き
個人事業主と法人では、税金に違いがあります。それぞれの税金は、以下の表を参考にしてください。
| 個人事業主 | 法人 |
| 所得税 | 法人税 |
| 個人住民税 | 法人住民税 |
| 個人事業税 | 法人事業税 |
個人事業主は、利益に対して所得税が課税されます。所得税は累進課税となっており、所得が増えるほど税率が上がり、最高税率は45%(住民税を除く)です。
一方、法人も利益に応じて法人税などが課税されます。法人税率自体は所得税ほど急激には上がりませんが、実際には法人住民税や法人事業税なども合わせて負担することになります。
また、法人は赤字であっても法人住民税の均等割が発生するため、一定の税負担が生じます。一方、個人事業主は利益が出なければ所得税や個人事業税は課税されません。
法人化による節税効果は利益額だけでなく、役員報酬の設定、社会保険、消費税、今後の事業拡大なども考慮する必要があります。そのため、利益が年間800万〜1,200万円程度になったタイミングを一つの目安として、税理士へ相談しながら法人化を検討するケースが一般的です。
違い③社会的信用
個人事業主は、法人に比べると社会的信用が低い傾向にあります。法人の場合は、会社の設立や組織、運営などついて定めた会社法という法律があり、それに沿って運営されるからです。資本金の金額が大きいほど、その会社に体力があるという証にもなり、社会的信用度が増します。
また、個人事業主はいつでも事業をやめられますが、法人は簡単にはやめられません。そのため、取引先や金融機関から見ても、法人のほうが信用できると判断されやすいといえます。
違い④責任の範囲
個人事業主の責任範囲が「無限」なのに対し、法人は「有限」です。個人事業主の場合、自分一人で事業を行うため、全責任を負わなければなりません。例えば、クライアントに対して賠償が発生すると、事業の売上で賄えない分は、個人の財産から支払わなければならなくなります。
一方、法人では、会社を設立した「個人」と「会社」は別人格として取り扱われます。そのため、会社の取引すべてに対して経営者個人が責任を負うことはありません。法人の責任範囲は、自分が出した出資額の範囲内です。
例えば、400万円を出資した会社が1,000万円の借入を行った場合、残りの600万円については責任を負いません。経営者個人が責任すべてを負う必要がないため、ある程度売上が上がってきたところで法人化したほうが、安心して事業を継続できるといえるでしょう。
違い⑤人件費
個人事業主の場合は自分だけの人件費だけしかかからないのに対して、法人の場合、社員やパート、アルバイトの人件費がかかります。個人事業主で仕事量が多くなった場合は、アウトソーシングを利用すれば必要以上の人件費を払うこともありません。
法人化してコンサルタントを雇う場合は、人件費を賄える売上を確保する、もしくは事前に支払う分の人件費を用意しておく必要があります。
関連記事:フリーランスコンサルタントの独立メリット・デメリットは?経費や税金は?
個人で活動するコンサルタントの年収の相場

コンサルタントの経験年数や期待される役割に応じて、以下の5つに分かれています。
- アナリスト
- コンサルタント
- マネージャー
- シニアマネージャー
- パートナー
ここでは、個人で活躍するコンサルタントの年収相場を、スキル別に紹介します。
アナリスト
アナリストとは、情報収集や分析、資料作成などを主な業務としており、ジュニアコンサルタントやコンサルティングファームなどと呼ばれることもあります。先輩のコンサルタントに同行し、指示を受けて実行・報告するのが基本です。
経験年数は2年以上のレベルです。コンサルティング料の単価や年収は、稼働率によっても変わります。コンサルティング単価は稼働率が100%で70万~110万円程度です。アナリストの場合、データの収集・調査・分析が主な業務となるため、稼働率は50~60%の募集が多い傾向にあります。そのため、別の仕事と掛け持ちで稼ぐこともできます。
年収は、840万~1,320万円が相場となります。
コンサルタント
コンサルタントとは、プロジェクトにおいて実務を担当するポジションです。自分の判断で、課題を解決するための仮説の構築や検証作業を行います。経験年数は3年以上のレベルで、コンサルティング単価は、100%の稼働率で130万~160万円程度です。
年収は、1,560~1,920万円が相場です。分野によっても単価や年収は異なりますが、ERPやSAPコンサルの場合は、年収2,000万円以上になることもあります。
関連記事:コンサルタントの単価の決まり方と費用の相場を種類別に解説
マネージャー
マネージャーとは、プロジェクトをまとめ、進行に責任が生じるポジションです。プロジェクトの管理や予算管理、顧客との交渉などを行います。経験年数は6年以上のレベルです。
コンサルティング単価は150万円以上、高いものだと220万円程度を提示する案件もあります。年収は1,800万円以上からが相場です。
シニアマネージャー
シニアマネージャーとは、大規模なプロジェクトのリーダー的存在で、プロジェクト管理、顧客折衝、予算管理などが業務です。クライアント先の経営層・意思決定者との信頼関係を構築し、組織の運営に活かすのはもちろん、チームの予算を策定し、収益に対する責任を負うなど、重要な役割を担います。
また、人材育成を行う場合もあります。経験年数は9年以上、コンサルティング単価は200万円以上です。年収は2,400万円以上が相場で、3,000万円を超えるコンサルタントも少なくありません。
パートナー
パートナーとは、共同経営者、出資者として会社の経営に関与する役職です。プロジェクトの最終的責任者であり、コンサルティングファームで考えると役員レベルのスキル・実績を持ち、コンサルタントとしての最高ポジションとなります。
経験年数は12年以上ではありますが、パートナーレベルと認められるためにはその人の人格や知識の深さなども関わるため、一概にはいえません。コンサルタント単価は、100%稼働で250万円以上です。年収は3,000万円以上が相場となります。
独立後の売上・手取り・稼働率別の収入については、フリーランスコンサルタントの年収で詳しく解説しています。
個人でコンサルティング事業を始める前の準備

何も準備をせずに個人でコンサルティング事業を始めてしまうと、失敗してしまうおそれがあります。ここでは、コンサルティング事業を始める前の準備について詳しく解説します。
①ご自身が提供できるコンサルタントの分野を明らかにする
自分の得意分野や専門知識、興味のあるポイントを把握し、自身が提供できるコンサルティングサービスを明確にしましょう。経営に関する幅広い知識があれば経営コンサルタントとして、人事評価や人材確保などの課題解決が得意なら人事系コンサルタントとして活躍できます。
自分が得意な専門領域を確立し、顧客の悩みにどう対応していくかを考えましょう。
関連記事:フリーランスの職務経歴書の書き方は?履歴書とはどう違うの?
②ニーズを分析する
自分が参入する分野にニーズがあるかを検証しましょう。顧客ニーズがない市場でいくら頑張っても、利益は見込めません。自身が提供するサービスを求める顧客がいるのか、売上が見込めるのかを徹底的に検討してください。
競合が多い場合は、ほかのコンサルタントとの差別化を図れるよう、詳細な分析を行います。ニーズを分析したうえで顧客の立場に立ち、提供できるサービスを考えていきましょう。
③長期的なビジョンを見据える
長期的なビジョンを見据え、目標を設定しましょう。長期的なビジョンがあれば、事業の方向性を決め、目標達成に向けて行動しやすくなります。顧客との良好な関係を築くのはもちろん、定期的な収入源を確保することも欠かせません。
また、報酬の設定やリスクマネジメント、財務計画など、あらゆる側面においてビジョンを持って事業を運営することを心がけてください。
④最低限の資金や備品を揃える
個人事業主の場合、比較的低コストで事業を始められます。しかし、通信設備やデスク、文具類など、最低限必要なものがなければ仕事になりません。必要なものを洗い出し、開業の前に準備しておきましょう。
また、開業後はまだ実績や知名度が十分でないため、顧客獲得までには時間がかかります。十分な資金を準備しておけば、安心して仕事を進められます。
⑤個人で活動するコンサルタント仲間を見つける
個人で活動するなら、同業者とのつながりを築くことが大切です。困ったときやサポートが必要なときなど、コンサルタント仲間がいれば相談できます。また、お互いに仕事を紹介しあうことも可能です。
トラブルがあった際に対処法を教えてもらったり、新しい情報や知識を得る機会につながったりなど、メリットも多くなります。
AI時代のフリーランスコンサルタントに求められる準備
生成AIの普及により、フリーランスコンサルタントの働き方も大きく変化しています。市場調査や議事録の作成、資料のたたき台作成など、これまで多くの時間を要していた業務は、生成AIを活用することで効率化できるようになりました。
一方で、AIがすべての業務を代替できるわけではありません。クライアントの課題を整理し、関係者との合意形成を行い、最適な意思決定を支援するといったコンサルタント本来の価値は、今後も重要であり続けるでしょう。
そのため、これから独立を目指す方は、AIを「競合」ではなく「業務を効率化するパートナー」として活用できるよう準備しておくことが重要です。
AIを活用すると効率化しやすい業務
生成AIは、特に以下のような業務で効果を発揮します。
- 提案書・報告書のたたき台作成
- 市場調査や競合調査
- 会議の議事録作成・要約
- メールやチャットの文案作成
- Excel関数や簡単なプログラムの作成
- アイデア出しや論点整理
これらをAIに任せることで、より付加価値の高い業務に時間を使えるようになります。
AIでは代替しにくいスキル
一方で、次のような業務は依然としてコンサルタント自身の経験や判断力が求められます。
- クライアントとの信頼関係の構築
- 経営課題や業務課題の本質的な整理
- ファシリテーションや合意形成
- プロジェクトマネジメント
- 実行支援・チェンジマネジメント
生成AIを活用しながら、こうした「人にしかできない価値」を提供できる人ほど、今後も高い市場価値を維持しやすいでしょう。
独立前に身につけておきたいAIスキル
独立を目指すのであれば、生成AIを日常業務に取り入れておくことをおすすめします。例えば、ChatGPTやMicrosoft Copilot、Geminiなどを活用し、資料作成や情報収集、文章作成の効率化に慣れておくことで、生産性を大きく向上させることができます。
AIを使いこなせること自体が目的ではなく、限られた時間でより高い成果を提供できる体制を整えることが、AI時代のフリーランスコンサルタントに求められる重要な準備といえるでしょう。
個人事業主のコンサルタントが集客するためにできること
個人事業主としてコンサルティング事業を継続するには、安定した案件獲得経路を確保することが重要です。
特に独立直後は、営業活動だけに多くの時間を割くことが難しいため、これまでの人脈やフリーコンサル向けエージェントなどを活用し、複数の獲得経路を持っておくとよいでしょう。
前職や既存人脈から紹介を受ける
前職の同僚や上司、取引先、プロジェクトで関わったコンサルタントなどから案件を紹介してもらう方法です。
過去の仕事ぶりや専門性を理解している相手からの紹介であれば、信頼関係を一から構築する必要がなく、比較的スムーズに案件へ参画できます。独立前から、自分の専門領域や対応可能な業務、独立後の連絡先などを周囲へ伝えておきましょう。
ただし、前職の就業規則や秘密保持義務、競業避止義務、顧客への直接営業に関する制限には注意が必要です。
フリーコンサル向けエージェントを利用する
フリーコンサル向けエージェントへ登録すると、経験や専門性、希望する単価、稼働率、勤務形態などに合った案件を紹介してもらえます。
自分で営業先を探す必要がなく、案件紹介だけでなく、クライアントとの面談調整、契約手続き、請求、参画後のフォローまで支援を受けられる点がメリットです。
一方で、エージェントによって得意とする領域や保有案件、商流、手数料の考え方は異なります。案件数だけでなく、エンドクライアントや元請企業との商流の近さ、担当者の業界理解、契約条件なども確認しましょう。
案件領域や単価、サポート内容を比較したい方は、フリーコンサルエージェントおすすめ7選をご覧ください。
LinkedInなどで専門性を発信する
LinkedInやビジネス系SNSを活用し、自身の専門領域や支援実績、業界に関する知見を発信する方法もあります。
例えば、DX推進、PMO、SAP、業務改革、新規事業開発など、自分が得意とするテーマについて継続的に発信することで、企業担当者やコンサルティング会社から相談を受けられる可能性があります。
プロフィールには、対応できる業務、過去の経験、希望する案件、稼働開始時期などを具体的に記載しましょう。ただし、過去のプロジェクトについて発信する場合は、クライアント名や機密情報を特定できない形にする必要があります。
コンサルティング会社やSIerと業務委託契約を結ぶ
コンサルティング会社やSIerでは、社内だけで必要な人材を確保できない場合に、外部のフリーコンサルタントをプロジェクトへ起用することがあります。
自分の専門領域と相性のよい企業へ経歴書や実績を提示し、業務委託先やビジネスパートナーとして登録しておけば、条件に合う案件が発生した際に声をかけてもらえる可能性があります。
継続的な取引につなげるには、専門性だけでなく、レスポンスの速さ、成果物の品質、関係者とのコミュニケーション、契約や情報管理の確実性も重要です。
過去の顧客から継続・再依頼を受ける
既存顧客からの契約継続や、過去に支援した顧客からの再依頼は、安定した案件獲得につながりやすい方法です。
目の前の業務を遂行するだけでなく、顧客が今後直面する課題を把握し、次に必要となる支援を適切なタイミングで提案することが重要です。契約終了後も守秘義務や営業上のルールを守りながら定期的に連絡を取り、相手の状況を確認するとよいでしょう。
また、顧客から別部署やグループ会社、取引先を紹介してもらえることもあります。期待を上回る成果と誠実な対応を積み重ねることが、新たな案件獲得につながります。
案件獲得を安定させるには、一つの方法に依存しないことが大切です。人脈や過去顧客との関係を維持しながら、フリーコンサル向けエージェントやコンサルティング会社との接点も持ち、複数の案件獲得経路を確保しておきましょう。
関連記事:フリーランスの案件探し11選、紹介が途切れない方法
個人でコンサルティング業を始める際のポイント

個人事業主は初期投資が少なく、開業届を出せば事業を開始できる点がメリットです。しかし、事業を軌道に乗せるために気をつけなければならないこともあります。
ここでは、そのポイントを解説します。
ポイント①リソースを確保する
個人事業主として事業を拡大する場合は、人員体制についても計画的に考える必要があります。受注が増えてくると、一人では対応できる案件数に限界があるため、案件をお断りせざるを得ないケースも出てきます。
従業員を雇用する方法もありますが、給与や社会保険などの労務管理が必要となり、事務負担も大きくなります。そのため、専門性の高いコンサルティング業では、必要に応じて業務委託やフリーランスのパートナーと協力しながら案件を進めるケースも少なくありません。
継続的に案件を受注するためには、自身だけでなく、信頼できるパートナーや協力会社とのネットワークを構築しておくことも重要です。
ポイント②安定的な集客を目指す
安定的に仕事が受注できるよう、集客経路を作っていきましょう。個人事業主は、サービスの提供はもちろん、営業活動も一人で行わなければなりません。プロジェクトのみに注力していると、営業にかける時間がなくなるため、仕事が継続的にできなくなってしまう恐れがあります。
顧客を紹介してくれる人脈を構築する、案件紹介サービスを活用するなど、営業活動とデリバリーを両立できるよう工夫しましょう。
ポイント③スキルアップを欠かさない
コンサルタントは常に学び続ける姿勢が求められます。特に、フリーランスのコンサルタントは報酬が高額で企業の期待値も高いため、さらなる努力が要求されるといえます。また、昨今のDX化にともない、ツールやシステムも、次々に新しいものに進化しているのが現状です。
新しいトレンドに合わせて知識を身につけるのはもちろん、既存のスキルを向上させていくことで、高い報酬の案件や新しい分野のプロジェクトへの挑戦が可能になります。コンサルタントに欠かせないスキルは、論理的思考力や洞察力、コミュニケーションなどさまざまです。セミナーに通う、本で学ぶ、YouTubeを見るなどして必要なスキルを身につけていきましょう。
個人事業主として営業活動を行うなら、ライティングスキルを磨くのもおすすめです。ライティングスキルを磨けば、自身で情報を発信し、宣伝ができるため集客につなげられます。
個人のコンサルタントが効率よく業務を進める方法
個人事業主としてコンサルタントを行う場合、クライアントから受けた仕事はもちろん、法務や会計、営業活動もすべて自分で行わなければなりません。
これらの仕事を効率よく進めるためにできることとして、「専門家とのつながりをもつ」「代行サービスを利用する」の2つの方法があります。ここでは、それぞれの詳細を解説します。
専門家とのつながりをもつ
必要に応じてサポートしてもらえるように、専門家を探しておきましょう。個人事業主が行う業務として挙げられるものには、会計管理、顧客管理、営業活動、確定申告の申請などがあります。
会社から独立して仕事を始める場合、経験のないことまでやらなければならないため大変です。困ったときに相談したりサポートを依頼したりできるよう、税理士や経営コンサルタントなどを見つけておけば、安心して業務を進められます。
また、無料相談を受け付けている公共機関や団体を利用するのもおすすめです。Webデザインやプログラミング、外国語など、さまざまなスキルを持った方と接点を持っておけば、いざというときに役立つでしょう。
代行サービスを利用する
代行サービスを利用するのもおすすめです。最近では、電話代行や営業代行など、さまざまな代行サービスがあります。代行サービスを利用すると費用はかかりますが、電話や営業にかける時間を業務に充てられるようになります。
マネージャーやパートナークラスになると収入も増えてくるため、自分で電話や営業を行うよりも代行サービスを利用したほうがプラスになる可能性もあります。
収支とのバランスを考えて、代行サービスも検討してみるとよいでしょう。
コンサルタントが個人事業主になるための手続き
コンサルタントが個人事業主として独立する場合、法人設立のような登記は必要ありません。ただし、税務署への届出や社会保険の切り替えなど、開業前後に行うべき手続きがあります。
必要な手続きを後回しにすると、青色申告の適用を受けられなかったり、健康保険や年金の加入に空白が生じたりする可能性があります。案件への参画準備と並行して、早めに対応しましょう。
主な手続きと実施時期は、以下のとおりです。
| 手続き・準備 | 必要性 | 実施時期の目安 |
|---|---|---|
| 開業届の提出 | 原則必要 | 開業した年分の確定申告期限まで |
| 青色申告承認申請書の提出 | 推奨 | 原則3月15日まで。1月16日以後の開業は開業日から2か月以内 |
| 健康保険・国民年金の切り替え | 退職して独立する場合は原則必要 | 原則として退職日の翌日から14日以内 |
| インボイス登録 | 取引先や売上状況による | 契約前に必要性を確認 |
| 事業用口座・カードの準備 | 推奨 | 開業時 |
| 会計ソフトの導入 | 推奨 | 取引や経費が発生する前 |
| 業務委託契約書などの確認 | 必須 | 案件の開始前 |
①開業届を提出する
個人事業主としてコンサルティング事業を始めた場合は、納税地を管轄する税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書」、いわゆる開業届を提出します。
現在、開業届の提出期限は、原則として「事業を開始した年分の所得税の確定申告期限まで」とされています。以前は「開業から1か月以内」と案内されていたため、古い情報と混同しないよう注意しましょう。
開業届は、税務署の窓口や郵送のほか、e-Taxを利用してオンラインで提出することもできます。開業届には、開業日、納税地、職業、屋号、事業の概要などを記載します。屋号は必須ではないため、個人名で活動する場合は記載しなくても問題ありません。
参照:国税庁「開業する場合」
②青色申告承認申請書を提出する
青色申告を利用する場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出します。
提出期限は原則として、青色申告を適用したい年の3月15日までです。ただし、その年の1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内に提出する必要があります。
期限を過ぎると、その年は青色申告を利用できず、原則として白色申告になるため注意が必要です。開業届と同時に提出しておくと、手続きの漏れを防ぎやすくなります。
青色申告では、一定の要件を満たすことで青色申告特別控除を受けられるほか、赤字を翌年以降へ繰り越せるなどのメリットがあります。ただし、控除を受けるためには、帳簿を適切に作成・保存しなければなりません。
③事業用の銀行口座・クレジットカードを用意する
個人事業主は、事業専用の銀行口座やクレジットカードを必ず作らなければならないわけではありません。ただし、プライベートと事業のお金を分けて管理するため、専用の口座とカードを用意することをおすすめします。
事業用と私用の支払いが混在すると、確定申告の際に取引を一件ずつ分類しなければならず、経理処理が複雑になります。事業用口座を用意し、案件報酬の入金、交通費、通信費、会計ソフトなどの支払いを集約しておけば、収支を把握しやすくなります。
屋号付き口座を開設できる金融機関もありますが、個人名義の口座でも事業に利用できます。取引先から指定がある場合も考えられるため、案件開始前に振込先の条件を確認しておきましょう。
④会計ソフトを導入する
個人事業主になると、売上や経費を自分で記録し、原則として毎年確定申告を行います。そのため、開業後の早い段階で会計ソフトを導入しておくとよいでしょう。
会計ソフトを銀行口座やクレジットカードと連携すれば、入出金情報を自動で取り込み、帳簿作成の負担を軽減できます。請求書の作成や入金管理、確定申告書の作成に対応しているサービスもあります。
また、領収書や請求書などの証憑は、決められた期間にわたって保存する必要があります。電子データで受け取った請求書や領収書については、電子帳簿保存法に沿った方法で保存しなければなりません。案件開始後にまとめて整理するのではなく、取引が発生した段階から記帳・保存する習慣をつけましょう。
⑤健康保険と年金の切り替え手続きを行う
会社を退職して個人事業主になる場合は、健康保険と年金の切り替えが必要です。
健康保険については、主に以下の選択肢があります。
- 市区町村の国民健康保険へ加入する
- 退職前の健康保険を任意継続する
- 一定の条件を満たして家族の健康保険の扶養に入る
保険料や加入条件はそれぞれ異なるため、退職前に比較しておくことをおすすめします。国民健康保険へ加入する場合は、原則として退職日の翌日から14日以内に、住所地の市区町村で手続きを行います。
また、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が会社を退職し、厚生年金の加入者でなくなった場合は、原則として国民年金の第1号被保険者への切り替えが必要です。こちらも、退職日の翌日から14日以内が提出期限です。
手続きには、退職日を確認できる離職票や健康保険資格喪失証明書、本人確認書類、基礎年金番号が分かる書類などが必要になる場合があります。必要書類は自治体によって異なるため、事前に確認してください。
⑥インボイス登録の必要性を判断する
個人事業主として開業したからといって、必ずインボイス発行事業者へ登録しなければならないわけではありません。
ただし、コンサルティング案件では、取引先が法人や課税事業者であることが多く、契約条件としてインボイス登録を求められる場合があります。登録しない場合、取引先が消費税の仕入税額控除を全額受けられず、報酬条件や契約可否に影響する可能性があります。
一方、インボイス発行事業者として登録すると、売上規模にかかわらず、原則として消費税の申告・納税が必要になります。登録の有無によって手取り額が変わる可能性があるため、次の点を確認したうえで判断しましょう。
- 取引先がインボイス登録を求めているか
- 提示された報酬が税込か税抜か
- 登録しない場合に報酬が調整されるか
- 今後の売上見込みがどの程度か
- 消費税の申告や納税に対応できるか
免税事業者が登録希望日からインボイス登録を受ける場合、登録希望日は申請書の提出日から15日以後の日を指定します。ただし、登録通知まで一定の期間を要する場合があるため、必要性が分かった段階で早めに手続きを進めましょう。
⑦業務委託契約書と秘密保持契約を確認する
フリーコンサルタントは、クライアントやエージェントと業務委託契約を締結して案件へ参画するのが一般的です。業務を始める前に、少なくとも以下の項目を確認しましょう。
- 業務内容と対応範囲
- 契約形態が準委任契約か請負契約か
- 報酬額と消費税の取り扱い
- 支払日と請求方法
- 稼働率、想定工数、精算条件
- 契約期間と更新条件
- 中途解約の条件
- 成果物や知的財産権の帰属
- 秘密情報の取り扱い
- 損害賠償の範囲と上限
- 再委託の可否
- 競業避止義務の有無
準委任契約は、業務を適切に遂行することを目的とする契約であり、原則として成果物の完成を約束する請負契約とは性質が異なります。契約書の名称だけで判断せず、実際の業務内容や責任範囲と契約条項が一致しているか確認することが重要です。
また、クライアントの経営情報やシステム情報、個人情報などを扱う案件では、業務委託契約とは別に秘密保持契約を締結することがあります。情報の利用目的、管理方法、返却・削除の期限、契約終了後も秘密保持義務が継続するかを確認してください。
内容が不明確な条項や、責任範囲が過度に広い条項がある場合は、そのまま締結せず、クライアントやエージェントへ確認しましょう。
個人事業主としてコンサルティング事業を始めよう
個人事業主は初期投資が少なく、開業にかかる手続きも簡単なため、すぐにコンサルティング事業を始められます。しかし、事業を軌道に乗せるには時間がかかるため、無料コンサルタントやSNSを活用するなどして着実に実績を積み上げていきましょう。
個人事業主の場合、クライアントからの依頼だけでなく会計や営業活動など、自分一人でやらなければならない業務は多岐にわたります。代行サービスを活用したり、専門家に相談したり、業務を効率的に行える工夫をしましょう。
特に、始めのうちは顧客の獲得までに時間がかかります。自身のスキルや知識を活かした高単価・好条件の仕事を見つけたいなら、フリーコンサルタント向けのマッチングプラットフォームの利用がおすすめです。
フリーランスのコンサルタントはTHE CONSULへの登録がお勧め
フリーコンサルタントの登録や案件紹介を行うTHE CONSULは、”実力あるコンサルタントが正当に評価され、その価値にふさわしい案件に出会える場所”を目指して設計した、フリーコンサルタント向けマッチングプラットフォームです。フリーコンサル経験者が利用者目線で徹底的にサービスを磨き込んで参りました。
現役コンサルタントがサービス提供しているため、案件の解像度を高めることができ、案件参画後のギャップを最小限に抑えることを実現
また、エンドクライアント様/元請様からの案件に限定した、商流の浅さに拘り、更には他社に出回らない独占案件も豊富に取り扱いしており、登録者の報酬を最大化する仕組みが整っています。そのため、あなたの知識・スキルが正当に評価されることで、高単価・好条件の“本当にやりたい仕事”と出会えます。
今後フリーランスのコンサルタントとして活動してみたいという方向けに、経験者によるご相談もご用意しております。まずはお気軽にご登録ください。
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