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ERP(Enterprise Resources Planning )にはさまざまな製品があり、特徴も異なります。企業が自社に最適なERPを導入できるよう、支援するのが「ERPコンサルタント」です。ERP導入の広がりを受け、ERPコンサルタントも注目を集めています。この記事では、ERPコンサルタントへの転職方法や具体的な仕事内容を解説します。
ERPコンサルタントとは
ERPコンサルタントとは、企業のリソースを一元管理するパッケージ「ERP(Enterprise Resources Planning )」の導入を支援する職種です。企業が保有する資源を活用して生産性および業務効率を向上し、経営課題の解決を目指します。ERPを導入する組織は大企業だけではなく、中小企業も増えています。
そもそもERPとは
ERPとは「企業資源計画」と訳され、企業の資源である「ヒト」「カネ」「モノ」「情報」を管理する考え方を指します。現在は、ERPを実現するためのシステム「ERPパッケージ」そのものを指すケースが一般的です。ERPパッケージは、「基幹系情報システム」とも呼ばれます。会計、人事、生産、在庫管理といった業務を1つのデータベースに統合することで、企業のリソースをまとめて管理できます。
ERPコンサルタントの平均年収
求人サイト「indeed」によれば、ERPコンサルタントの平均年収は約660万円です(※1)。一方、国税庁の調査によると、2022年度の日本の平均給与は約458万円でした(※2)。ERPコンサルタントのほうが約202万円も高いため、高収入な職業と言えます。
実際の求人による年収は?
ERPコンサルタントの求人を見ると、以下のように年収にばらつきがあります。
- 未経験可の求人:年収300万円~950万円
- 経験者向け求人:年収600万円〜800万円
- 事業会社出身者向け:年収500万円~1,200万円
- 在宅勤務可の求人:年収500万円~1,000万円
- フリーランス向け:月収67万円(年収804万円)
(求人参照元:求人ボックス)
未経験者向け求人も含め、いずれも給与が高い傾向にあります。フリーランス求人も月収67万円と高単価なため、独立後も安定した収入が期待できるしょう。
※1 参照:indeed「日本でのERPコンサルタントの平均給与」2023年12月のデータ
※2 参照:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」
ERPコンサルタントの具体的な仕事内容
ERPコンサルタントの主な仕事は、以下の4つです。
- 課題と導入目的の決定
- ERP製品の選定
- ERP導入支援
- ERP運用の教育やサポート
業務内容を詳しく説明します。
課題と導入目的の決定
クライアントの経営層や各部門にヒアリングして経営課題を洗い出し、ERPを導入する目的を決めます。業務フロー、経営資源の種類、既存システム、具体的なニーズといった情報を収集・分析し、目的達成に適したERPシステムの要件定義を行います。
ERP製品の選定
要件定義に沿って、クライアントに導入するERP製品を選びます。「クラウド型かオンプレミス型か」「統合型かコンポーネント型か」「既存システムとの連携」「カスタマイズする機能や仕様」など、多岐にわたるポイントを加味して最適なERPパッケージを決定します。
ERP導入支援
ERP製品を決定したら、クライアントへのERP導入プロジェクトのマネジメントを行います。予算の見積もりや詳細なスケジュール立案を行い、進行を管理します。トラブル発生時の柔軟な対応も、ERPコンサルタントの役割です。
ERP運用の教育やサポート
クライアント従業員に対し、ERPの運用方法を研修します。研修に用いる資料を作成し、座学や実践研修を進めます。ERP導入後も、ERPパッケージへの機能追加や開発、効果検証、改善策の提案といった継続的な支援が不可欠です。検証と改善を繰り返し、ERPパッケージを最適化していきます。
ERPコンサルタントの種類
厳密な定義があるわけではありませんが、ERPコンサルタントは仕事の領域によって次の2つに分かれます。
- ERP導入コンサルタント
- SAPコンサルタント
それぞれの違いを見ていきましょう。
ERP導入コンサルタント
ERP導入コンサルタントとは、名前の通りERPの導入を全般的にサポートします。さまざまなERPパッケージの特性を詳しく理解しており、顧客に応じた最適な製品の提案が可能です。必要に応じて、オリジナルのERPシステムを一から作る「スクラッチ開発」を提案する場合もあります。
SAPコンサルタント
SAPコンサルタントとは、ERPパッケージの1つである「SAP」を専門的に扱う職種です。ドイツのSAP社が提供する製品であり、世界的なシェアを占めています。国内でも導入企業が非常に多いため、SAPを熟知したコンサルティングサービスの需要も高いです。
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ERPコンサルタントの働き方と企業例
ERPコンサルタントには、主に下記4つの働き方があります。
- コンサルティングファームで働く
- ERPベンダーで働く
- SIerで働く
- フリーランスとして独立する
具体的な企業例も合わせて紹介します。
コンサルティングファームで働く
1つ目は、コンサルティング業を専門的に行う「コンサルティングファーム」で働くパターンです。たとえば、アビームコンサルティングなどの企業が該当します。大手コンサルティングファームの場合はERPサービスだけでなく、戦略・経営・ITなどのさまざま領域のコンサルティングサービスを提供しています。反対に、中小規模のブティックファームであれば、ERPおよびERPに近い領域に特化する形が一般的です。
ERPベンダーで働く
ERPベンダーとは、ERPパッケージを開発し、提供する企業です。ERPベンダーに所属する場合、基本的に自社のERPパッケージのみ取り扱います。自社のERPパッケージのスペシャリストとして、クライアント企業への導入を支援します。代表的なERPベンダーの1つが、「SAP」を提供するSAP社です。
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SIerで働く
SIerとは、ITシステムの開発および運用や、他社のITサービスの導入支援を行う企業です。ERPパッケージのパートナー企業であるSIerに所属し、ERPコンサルタントとしてクライアントへのERP導入を支援します。また、NTTデータ社のように、自社でERPパッケージの開発・提供を行うSIer系企業も存在します。
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フリーランスとして独立する
ERPコンサルタントは、フリーランスとして独立も可能です。企業所属のERPコンサルタントとして経験を積み、独立します。会社員よりも報酬が高くなりやすいため、年収アップを目指してフリーランスになる人は多数存在します。独立後はフリーランスマッチングサービスを利用すれば、安定した案件獲得が見込めるでしょう。
ERPコンサルタントに求められるスキル
ERPコンサルタントになるためには、高度なスキルが求められます。これからERPコンサルタントを目指す人は、以下4つのスキルを身につけましょう。
- ERPパッケージの深い知識
- 経営や各業務への理解
- コミュニケーション能力
- 課題解決力
順番に解説します。
ERPパッケージの深い知識
クライアントの業界や課題に合った製品を選定するためには、ERPパッケージの深い知識が必須となります。たとえば、「SAP」「Microsoft Dynamics」「Oracle EBS(Oracle ERP Cloud)」といったERPパッケージの特徴や機能の理解が必要です。さらに、特定の業界に特化した製品もあるため、ERPパッケージの幅広い知識が欠かせません。
経営や各業務への理解
ERPは企業の資源を全般的に扱い、最適化するシステムです。したがって、ERPコンサルタントは経営知識に加え、会計、税務、人事、労務などの各業務内容を理解する必要があります。業務内容を理解していなければ、どの業務にどのような資源があるのかを把握できません。クライアントの要望を正しく理解するためにも、不可欠なスキルです。
コミュニケーション能力
コンサルティング業はさまざまな人と関わるため、優れたコミュニケーション能力が重要です。クライアントのニーズを汲み取るヒアリング力や、提案内容を的確に伝える言語化能力など、コミュニケーション全般のスキルが必須となります。
課題解決力
ERPコンサルタントには、的確な課題解決力が欠かせません。ERPパッケージの導入は、クライアントが抱える課題を解決するために行います。加えて、ERP運用段階の効果検証と改善策の提案も担います。ゆえに、クライアントの課題を見抜き、効果的な解決策を立案するスキルが必要となるわけです。
ERPコンサルタントになるには?主な転職ルート
ERPコンサルタントに転職するには、次の3つの方法があります。
- ERPエンジニアからの転職
- コンサル職からの転職
- 未経験からの転職
各ルートの詳細を確認しましょう。
ERPエンジニアからの転職
ERPエンジニアの経験がある場合、ERPコンサルタントへ転職しやすいでしょう。ERPエンジニアとは、ERPシステムの開発や保守運用を行う職種です。ERPについて熟知しているため、転職で有利なポイントとなります。PM(プロジェクトマネージャー)の経験があれば、より一層コンサルタント適性があると評価されやすいでしょう。
コンサル職からの転職
コンサル職の経験がある人も、ERPコンサルタントへの転職が成功しやすいです。中でも、IT関連のコンサルタントであれば、有利になる可能性が高まります。いずれのコンサル職でもERPに関する勉強は必要になりますが、豊富なコンサルティング経験が強みになるでしょう。
未経験からの転職
一般的に、ERPコンサルタントの求人は、ERPエンジニアまたはコンサルタントの経験を条件とする募集が多いです。しかし、人材育成のために、未経験者でも応募できるポテンシャル採用の求人もあります。ポテンシャル採用された場合、ERPやコンサルティングのスキルを一から身につけられるでしょう。
ERPコンサルタントになるために必要な資格と勉強方法
これからERPコンサルタントを目指す場合、以下4つの資格の取得がおすすめです。
- SAP認定コンサルタント資格
- 中小企業診断士試験
- ORACLE MASTER
- 簿記検定試験
資格の概要と勉強方法を紹介します。
SAP認定コンサルタント資格
SAP認定コンサルタント資格とは、ERPパッケージ「SAP」の専門的なスキルを認定する資格です。ERPエンジニアなどのプログラマー向けの試験を用意しており、資格は100種類以上に細分化されています。基礎的なトレーニング動画で独学できるほか、SAP社が行う「SAPトレーニング」の受講もおすすめです。
中小企業診断士試験
中小企業診断士とは、中小企業の経営状態を分析し、適切なアドバイスをする専門家です。国家資格の1つであり、試験に合格することで経営コンサルタントとしてのスキルを証明できます。中小企業診断士試験向けのオンライン通信講座は多数あるため、勉強しやすい資格と言えます。
ORACLE MASTER
ORACLE MASTERとは、ERPパッケージ「Oracle EBS(Oracle ERP Cloud)」を提供するOracle社の認定資格です。「Oracle Database」に関する知識と技術が問われ、ERPを構築するデータベースについて詳しく学べます。勉強する際は、参考書籍を活用してみてください。
簿記検定試験
簿記検定試験とは、組織のお金の流れを把握し、帳簿のルールの知識を認定する試験です。4種類の等級があり、初心者向けの3級とビジネスマン向けの2級が人気を集めています。経営や会計の知識を体系的に習得できるため、経営資源を扱うERPコンサルタントと相性の良い資格です。ポピュラーな資格ゆえ、通信講座や参考書籍、通学などの好きな勉強方法を選べます。
ERPコンサルタントのキャリアパス
ERPコンサルタントとして働く前に、将来的なキャリアパスを考えておきましょう。ERPコンサルタントのキャリアパスは、主に次の4つです。
- ERPコンサルタントのマネージャー職を目指す
- ITコンサルタントへの転職
- 大手コンサルティングファームへ転職
- フリーランスとして独立
順番に解説します。
ERPコンサルタントのマネージャー職を目指す
1つ目のキャリアパスは、上位役職であるマネージャーを目指すルートです。ERPに限らず、コンサルタントには、アナリストやマネージャーなどの役職があります。人材育成やプロジェクトの指揮を担う重要な役職であるため、高報酬が期待できます。
ITコンサルタントへの転職
ERPコンサルタントは、同じIT技術を扱う「ITコンサルタント」へ転職しやすいです。ITコンサルタントの仕事は、ERPパッケージに限らずITシステム全般を扱います。EPRコンサルタントとして培ったIT技術や知識を活かせるため、転職を目指す人もいるでしょう。
大手コンサルティングファームへ転職
現状の待遇よりも、さらに好待遇なコンサルティングファームへの転職を目指すパターンです。高報酬な企業へ転職するケースだけでなく、ワークライフバランスを重視して転職する場合もありえます。
フリーランスとして独立
フリーランスのERPコンサルタントになり、自由に働くキャリアパスも考えられます。フリーランスは仕事量の調整がしやすいため、プライベートを大切にしたい人に適しているでしょう。また、高額な案件が多いことから、年収を上げたい人もフリーランスに向いています。
ERPコンサルタントの将来性は?
ERPコンサルタントは、将来性がある職業と言えます。かつてのERPは大企業向けのソリューションでしたが、現代では中小企業にも導入が広がりました。ERPを導入する企業が増えているため、ERPコンサルタントの需要も高まっています。さらに、ERPパッケージの代表的な製品「SAP」が、2027年にサポートを終了します。後継製品「SAP S/4 HANA」への移行が必要な企業が多い点からも、ERPコンサルタントの需要を加速させるでしょう。
ERPコンサルタントとは?まとめ
ERPコンサルタントは、クライアントへのERP導入を支援する職業です。ERPエンジニアや、コンサルタント経験がある人は転職しやすい仕事です。とはいえ、ポテンシャル採用の求人もあるため、未経験からの転職も不可能ではありません。これからERPコンサルタントを目指す人は、フリーランス化やさらなる転職などのキャリアパスを考えてみてください。キャリアパスを明確にすることで、将来設計が立てやすくなるでしょう。
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