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IT戦略とは?策定のロードマップや失敗パターン、成功させるポイントを解説

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インターネットの普及やクラウドサービスの登場により、企業によるIT活用の流れは加速しています。これから新たに業務へITを組み込みたい場合、「IT戦略」の策定が重要です。むやみにIT機器を導入しても、失敗してしまう恐れがあるからです。

この記事では、現役フリーコンサルタントの筆者がIT戦略について詳しく解説します。IT戦略策定のロードマップや成功のポイントを紹介しますので、ぜひお役立てください。

IT戦略とは

IT戦略とは、ビジネスにIT(情報技術)を導入し、活用するための具体的な取り組みです。ITとは、PCやスマートフォンなどのデバイス、クラウドサービス、業務用ツールを指します。ITおよびインターネットが浸透した現代においては、事業規模にかかわらずあらゆる企業にIT戦略が必要とされています。

IT戦略の具体的な施策

IT戦略で行う具体的な施策は、以下の通りです。

  • 課題や目標の決定
  • ITシステムの選定
  • ITシステム導入の計画立案
  • ITシステム導入に必要な予算・人員の確保
  • ITシステムの運用方法の策定

こうした施策を中長期的に進めることで、IT戦略による生産性向上などの効果を得られます。

IT戦略に似た「DX戦略」との違い

IT戦略とよく似ている取り組みとして「DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略」があります。DX戦略とは、ITを活用して新たな事業を作り出す施策です。たとえば、「サブスクリプション型の音楽配信サービス」や「コンビニの無人決済システム」といった事例があります。

一方、IT戦略の目的は、ITを使った既存業務の改善です。新しいビジネスを作るわけではなく、現在のビジネスが抱えている課題を解決するために行われます。

関連記事:DXコンサルタントとは?将来性や仕事内容、転職に必要なスキルを解説

企業がIT戦略に取り組むメリット

企業がIT戦略を実施すると、以下3つのメリットを得られます。

  1. 生産性向上につながる
  2. BCP対策になる
  3. 段階的に導入できる

それぞれ詳しく説明します。

生産性向上につながる

IT戦略は、ビジネスの生産性向上が見込めます。実際の傾向として、東京商工会議所の2021年度調査(※1)が参考になります。直近3年間の利益が増加傾向にあると答えた企業のうち、積極的にITを業務に導入している「IT活用レベル3〜4」の企業が全体の60.7%を占めていました。反対に、IT導入が進んでいない「IT活用レベル1〜2」の企業は、全体の34.6%に留まります。ITシステムを活用している企業は業務が効率化し、生産性向上につながったと考えられます。

※1 参照:東京商工会議所「IT活用実態調査

BCP対策になる

クラウドサービスに代表されるITシステムの活用は、BCP対策としても有効です。自社の情報資産をアナログ管理していると、事業継続に必要なデータが被災時に失われる可能性があります。そこで、クラウドサービスを活用すれば、自社の重要なデータをクラウドサーバー上に保管できます。自社が被災してもデータは無事なため、被災後の迅速な復旧が可能です。

段階的に導入できる

IT戦略は、大規模な業務システムに限らず、以下のようなツールから小規模に導入できます。

  • Web会議ツール
  • チャットツール
  • スケジュール共有アプリ
  • オンラインストレージ

こうしたツールは無料または少額で利用できるため、低予算でも採用できます。アナログ環境から段階的にIT環境へ移行することで、社員へのスムーズな運用定着も見込めるでしょう。

IT戦略策定から実行までのロードマップ

IT戦略に着手する際は、以下6つの手順に沿って進めましょう。

  1. 将来的なビジョンや目標の決定
  2. 現状の課題の洗い出し
  3. 課題の解決策の立案
  4. 解決策に必要なITシステムの選定
  5. コストパフォーマンスの検証
  6. ITシステムの導入・効果検証

具体的な内容を解説します。

将来的なビジョンや目標の決定

はじめに、自社の経営上の目標や将来的なビジョンを決めます。ITシステムの導入は、あくまで手段です。ゆえに、ITシステムを活用して達成したい目標を明確にする必要があります。経営層が考える目標を明らかにし、今後の施策の指針としましょう。

現状の課題の洗い出し

目標を達成するために、業務の改善すべき部分を洗い出します。そのために、自社の詳しい現状調査が必要です。現在の業務内容およびプロセス、導入済みのITシステムを正確に調べましょう。また、従業員へのヒアリングも実施し、業務に関する問題点を聞き出します。

課題の解決策の立案

洗い出した課題の原因を特定し、解決するための方法を検討します。たとえば、以下のように課題から解決策を導き出します。

  • 課題:特定の社員に残業が多い
  • 原因:仕事が属人化し、特定の社員しかこなせない業務が増えている
  • 解決策:属人化を解消するため、情報共有やノウハウ蓄積がしやすい仕組みと体制を導入する

解決策が決まったら、「誰が」「いつ」「何を行うか」といった詳しい計画も立てましょう。

解決策に必要なITシステムの選定

課題の解決策に用いるITシステムの種類や、具体的な製品を選びます。前項の例で言えば、属人化の解消には「ワークフローシステム」「ナレッジマネジメントツール」といったITシステムが適しています。インターネットで情報収集し、ITシステムの公式サイトから無料相談や試用デモを申し込んでみましょう。また、単にITシステムを選ぶだけでなく、ITシステムを組み込んだ新たな業務フローの検討も必要です。

コストパフォーマンスの検証

導入するITシステムを決定したら、コストパフォーマンスを検証します。ITシステムの費用は、「導入までの初期費用」と「月額料金などのランニングコスト」の2種類が生じます。ITシステムベンダーに具体的な見積もりを出してもらい、業務効率化などの導入効果で得られる利益と比較しましょう。

ITシステムの導入・効果検証

実際にITシステムを導入し、運用を開始します。いきなり運用を始めるのではなく、試用デモを活用してあらかじめ従業員に利用方法を覚えてもらうと良いでしょう。操作方法や新たな業務フローのマニュアル作成もおすすめです。導入後は、ITシステムの効果検証も行い、改善点がないかを検討しましょう。

IT戦略の策定プロセスに関する疑問

IT戦略を策定する際は、以下3つのよくある疑問点を解消してから着手しましょう。

  1. IT戦略の策定に関わるポジションは?
  2. IT戦略を決めるタイミングは?
  3. IT戦略の策定に外部支援は必要?

順番にお答えします。

IT戦略の策定に関わるポジションは?

IT戦略は、経営層と情報システム部門が中心となって進めます。IT戦略の方向性となる「経営上の目標」を定めるには、経営層の意見が不可欠です。その上で、ITシステムの詳しい導入プロセスや運用方法を、情報システム部門が主導して決めていきます。ただし、課題の聞き取りを行う現状調査には、営業や経理といったユーザー部門の協力も必須です。

IT戦略を決めるタイミングは?

企業によって異なるものの、以下の場面でIT戦略を策定するケースが一般的です。

  • 新規事業の立ち上げ
  • IT環境の変化
  • 市場の変化
  • 情報資産の管理強化が必要になったとき
  • アナログ業務に限界を感じたとき

いずれのタイミングにせよ、ITシステムによる経営課題の解決が見込まれる際に実施されます。

IT戦略の策定に外部支援は必要?

自社に情報システム部門がある場合、IT戦略の策定そのものに外部支援は不要な企業が多いでしょう。外部支援が不要な場合は自社のみでIT戦略を決め、ITシステムの導入や運用に関してはSIerにサポートしてもらう流れとなります。一方、IT戦略に割けるリソースが不足していたり、情報システム部門がなかったりする場合、IT戦略コンサルタントへ依頼したほうが良いでしょう。

関連記事:SIerとITコンサルの違いとは? 業務内容やスキル・年収・転職のポイントを解説

IT戦略のよくある失敗パターンと対策

IT戦略は成功するばかりではなく、失敗してしまう可能性もあります。IT戦略に着手する前に、以下4つの失敗パターンと対策を把握しましょう。

  1. 「ITシステム導入」自体が目的化する
  2. 過剰な性能によりコストが増大する
  3. ITシステムの利用が定着しない
  4. 情報セキュリティリスクが高まる

それぞれの問題点を確認しましょう。

「ITシステム導入」自体が目的化する

とりわけ多い失敗例が、ITシステム導入そのものの目的化です。ITシステムの導入は課題解決のための手段に過ぎず、目的ではありせん。ITシステムの導入をゴールにすると、正確な課題を発見できず、現在の業務をそのままデジタル化するだけになる恐れがあります。業務効率の改善などの成果を得るためには、現状の問題点の見極めや業務フローの再構築が必須です。

過剰な性能によりコストが増大する

ITシステムを選ぶ際、つい過剰な機能を持たせてしまうケースがあります。自社の利用実態に見合わないほど性能を高めると、コストが膨らんでしまいます。無駄な費用となるため、必要な性能のみの実装が大切です。まずはスモールスタートし、業務に合わせて必要になった分だけ機能を追加しましょう。なお、クラウドサービスであれば、簡単にユーザー数やオプション機能の追加が可能です。

ITシステムの利用が定着しない

せっかくITシステムを導入しても、ユーザー部門に定着しないパターンもあるでしょう。利用が進まない要因として、以下の理由が挙げられます。

  • システムが使いづらい、操作が難しい
  • 画面が見づらい
  • そもそも使い方がわからない
  • わざわざアナログ作業から変える目的がわからない

ITシステムを導入する際は、ユーザー向けの利用研修やマニュアルの作成が重要です。また、試用デモの段階でUIや操作方法を確認し、使い勝手の良さを確かめてみてください。ITシステムを使うメリットも周知し、アナログ作業から刷新する必要性を理解してもらいましょう。

情報セキュリティリスクが高まる

ITシステムを導入したことで、かえって情報セキュリティリスクが高まってしまう事例です。これまでアナログ管理していた情報資産をITシステム上で扱うため、ずさんな対策だと脆弱性が発生しかねません。顧客情報の漏えいなどの問題が生じれば、自社の信用が失われます。システムによるマルウェア・不正侵入対策に加え、従業員への情報セキュリティ教育を実施しましょう。

IT戦略を成功に導くポイント

IT戦略の失敗を避けて成功させるためには、次の5つのポイントに取り組んでみてください。

  1. 他社の成功事例を参考にする
  2. クラウドサービスを選ぶ
  3. IT戦略ナビで「IT戦略マップ」を作る
  4. ITシステムの専用フレームワークを活用する
  5. 政府の「IT導入補助金」制度を利用する

具体的な施策を見ていきましょう。

他社の成功事例を参考にする

同業他社や自社と似たような悩みを持っていた企業など、同業他社の成功事例を参考にしましょう。ITシステムベンダーの公式サイトには、豊富な導入事例が掲載されています。自社のIT戦略の策定に役立つため、できる限り多くの事例を探してみてください。さらに、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーション銘柄」も参考になります。IT戦略ではなくDX戦略ですが、IT活用に取り組んでいる企業のレポートが多数掲載されています。

▶︎デジタルトランスフォーメーション銘柄

クラウドサービスを選ぶ

業務内容や事業規模にもよりますが、自社サーバーを用いる「オンプレミス」よりも「クラウドサービス」がおすすめです。オンプレミスは自社サーバーの保守管理が必要になり、初期費用と運用費用のどちらも高額になりがちです。対するクラウドサービスは、システムベンダーが保守管理を行います。自社管理が不要で費用も抑えられるため、基本的にはクラウドサービスの中からITシステムを選定してみてください。

IT戦略ナビで「IT戦略マップ」を作る

IT戦略ナビとは、簡易的な「IT戦略マップ」を作れる無料Webサイトです。独立行政法人の中小機構が提供しています。Webブラウザからの利用に対応しており、専用アプリのインストールは不要です。サイト上で業種や経営課題などの選択肢を選んでいくだけで、自社が行うIT戦略の要点をまとめたロードマップが作成されます。IT戦略の流れが可視化されるので、活用してみましょう。

▶︎IT戦略ナビ

ITシステムの専用フレームワークを活用する

ITシステムによっては、専用のフレームワークを用意している場合もあります。フレームワークとは、ITシステムの導入までにやるべき項目を記したツールです。項目を穴埋めすると、導入計画が完成します。たとえば、クラウドコンピューティングサービス「AWS」は、「AWSクラウド導入フレームワーク (AWS CAF)」を提供しています。専用フレームワークがない場合、他社製品のフレームワークを参考にしてIT戦略を立てると良いでしょう。

▶︎AWSクラウド導入フレームワーク (AWS CAF)

政府の「IT導入補助金」制度を利用する

中小企業や小規模事業者の場合、政府の「IT導入補助金」を申請できます。IT導入補助金とは、導入費用の半額(最大450万円)を政府が補助してくれる制度です。ITシステムの初期費用の負担を軽減できるので、積極的に利用しましょう。詳しい募集要項や手続きについては、公式サイトをご覧ください。

▶︎IT導入補助金

IT戦略で導入される主なITソリューションの種類

IT戦略では、実際にどのような製品を導入するのでしょうか。ここでは、主なITソリューションを6つ紹介します。

  1. SFA(営業支援システム)
  2. CRM(顧客関係管理システム)
  3. 情報共有ツール
  4. 勤怠管理システム
  5. 生産管理システム
  6. クラウド会計ソフト

それぞれの特徴を説明します。

SFA(営業支援システム)

SFA(営業支援システム)とは、営業活動に必要な機能を網羅するシステムです。顧客情報、案件管理、営業活動管理、レポート、予実管理などの機能があります。営業活動の生産性アップや、営業に関する属人化の解消に効果的です。

CRM(顧客関係管理システム)

CRM(顧客関係管理システム)とは、顧客情報の管理に特化したシステムです。顧客ごとの購買履歴や問い合わせ内容、顧客分析、リード管理といった機能を利用できます。見込み顧客を育成するリードナーチャリングや、成約率の向上に役立ちます。

情報共有ツール

情報共有ツールとは、以下ソリューションの総称です。

  • ビジネスチャット
  • オンラインストレージ
  • スケジュール・タスク管理ツール
  • 社内ポータル
  • ドキュメント作成ツール

いずれも無料や低額で使えるサービスが多く、スムーズなコミュニケーションや情報管理に適しています。

勤怠管理システム

勤怠管理システムとは、従業員ごとの勤怠状況を記録・集計するシステムです。従業員が所持するスマホやICカードで読み取れるシステムが一般的で、比較的導入しやすいと言えます。勤怠管理が自動化されるため、給与計算ミスの防止や正確な労働時間の把握が可能です。

生産管理システム

生産管理システムとは、製造業の計画、発注、生産、販売、在庫管理を総合的に担うシステムです。適切な在庫管理や原価管理、需要予測により、製造コストと納期の最適化に貢献します。また、総合的な生産管理システムのほか、工程ごとに特化したシステムもあります。

クラウド会計ソフト

クラウド会計ソフトとは、企業の収支管理から決算書の作成まで行うクラウドサービスです。金融機関との連携による自動記帳や、請求書および給与明細との連携など、会計処理に関する機能に特化しています。数値の手入力がなくなるため、業務効率化に加えて会計ミスの予防が可能です。

IT人材が不足している企業がIT戦略を進めるには?

いざIT戦略を進めようと思っても、人材不足に悩む企業も多いでしょう。IT戦略を決めるためには、ITシステムに関する専門知識が不可欠です。そのため、「そもそも自社に必要なITシステムの種類がわからない」と困る企業は多数存在します。IT人材不足にお悩みであれば、IT戦略コンサルタントへの相談がおすすめです。

戦略決定から任せるなら「IT戦略コンサルタント」へ

IT戦略コンサルタントに依頼すると、経営課題の洗い出しからITシステムの導入支援までトータルでサポートしてもらえます。IT戦略のスタート段階からマネジメントするため、「現状調査に割く時間がない」とお悩みの場合でも依頼可能です。

IT戦略コンサルタントは、コンサルティングファームに所属している方、あるいは、フリーランスの方もいらっしゃいます。フリーランスマッチングサービスを使えば、自社のIT戦略に必要なスキルを持つ人材を紹介してもらえます。これからIT戦略に取り組むのであれば、IT戦略コンサルタントに依頼してみてはいかがでしょうか。

関連記事:ITコンサルタントが独立してフリーランスになるには?未経験OK?案件や年収も紹介

関連記事:フリーランスコンサルタントの独立メリット・デメリットは?経費や税金は?

IT戦略策定のロードマップや失敗パターンまとめ

IT戦略とは、自社のビジネスにITを効果的に活用する計画です。近年は、ITを積極的に活用している企業ほど利益が高い傾向があります。IT導入はBCP対策にもなり、将来的な事業継続を見据えた戦略としても効果的です。IT戦略を進める際は、紹介したロードマップや成功のポイントをぜひ参考にしてみてください。

関連記事:DX人材とは?必要なビジネススキルから人材育成まで徹底解説

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Shine Craft株式会社 代表取締役 濱口浩平
監修者
濱口浩平
Shine Craft株式会社 代表取締役
・2008年野村総合研究所入社、外資コンサルティングファームを経て、2015年よりフリーコンサルタントして活動開始。これまで、IT戦略、DX推進、新規事業策定、PMO、システム導入など幅広いプロジェクトを経験。
・2022年Shine Craftを共同創業
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