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近年、BPRが改めて注目を集めています。その背景として、少子高齢化による労働力不足、働き方改革やコロナ禍の影響によるリモートワークなど、既存の業務プロセスでは対応が難しいことが挙げられます。
企業だけでなく、自治体など幅広くBPRの取り組みは必要とされており、BPRコンサルタントへのニーズも高いと言えるでしょうか。
ここでは、BPRコンサルタントとして活動していくために必要なことについて、ご紹介します。
BPRとは?
BPRは、Business Process Re-engineeringの略で、日本語で「業務改革」を意味し、企業活動全ての仕組みにメスを入れる活動で、組織の構築、業務プロセスの見直し、システム再設計など幅広いジャンルが対象となります。
この手法は、1990年代初頭にマイケル・ハマーとジェームス・チャンピによって提唱されました。BPRの主な目的は、生産性の向上、コスト削減、サービスの質の向上、顧客満足度の向上などです。
BPRの特徴は、既存のプロセスを小さな改善にとどまらず、根本から見直す点にあります。これには以下のようなステップが含まれます:
- プロセスの分析と評価:現在のプロセスを詳細に分析し、非効率や問題点を特定します。
- 再設計:最適なプロセスを設計するために、現在のプロセスを一から再構築します。この段階では、創造的な発想と革新が重要です。
- 実装:新しいプロセスを実際に適用します。この際、技術的な変更だけでなく、組織構造や企業文化の変更も伴うことがあります。
- 継続的な評価と改善:新しいプロセスの効果を定期的に評価し、必要に応じてさらなる改善を行ます。
BPRと業務改善の違い
BPRと業務改善は、企業や組織の効率と効果性を高めるためのアプローチですが、その範囲と方法論において重要な違いがあります。
BPR | 業務改善 | |
定義と 目的 | ・企業の基本的な業務プロセスを根本的に見直し、再設計することが目的 ・大幅な効率化、コスト削減、サービス品質の向上を目指す | ・既存の業務プロセスを洗練し、効率化することが目的 ・小さな改善や調整を通じて、業務の質と効率を徐々に向上させることに重点を置く |
アプ ローチ | ・現在のプロセスを一から見直し、全く新しいプロセスを構築することが多い ・大胆な変革を伴い、しばしば組織構造や企業文化の変更も必要とされる | ・既存のプロセスを基にして、小規模な改善や最適化を行う ・段階的かつ連続的な改善が特徴で、大きな組織変更は伴わないことが多い |
スケールと影響 | ・全社的なスケールで実施されることが多く、その影響は組織全体に及ぶ ・変革は深刻であり、リスクも伴うが、成功すれば大きな成果をもたらす | ・部門レベルや特定のプロセスに焦点を当てることが一般的 ・小規模ながら持続的な改善を実現し、リスクは比較的小さい |
BPRコンサルタントとは?
BPR自体は、1990年代に不況で苦しんでいた当時のアメリカで生まれ、日本では2014年に全企業の7割が取り組むほど、浸透してきましたが、成功率が低いことが課題であり、なかなか自社単独では、やりきれないのが現状です。BPRの成功率を高めるために、外部のBPRコンサルタントを採用するケースが多く見られています。
慣れ親しんだプロセスを変えようとすると、想像以上に社内の反発を受けることは多々あります。その結果、BPRが頓挫するケースは少なくありません。
そのため、本気でBPRを推進していくと決めた経営者は、社内では脱却できない部分にメスを入れて、BPRを推進していくことができるBPRコンサルタントの存在が必要であることを理解しています。そのため、コンサルティング会社やフリーランスのコンサルタントなどの外部のプロフェッショナルに委託する流れが活発化しています。
BPRの成功率を高め、効果を最大化するのが、BPRコンサルタントの役割であり、必要性が高まっています。
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BPRコンサルタントの年収
BPRコンサルタントの年収は、経験、スキル、所属する企業の種類や規模によって異なります。一般的に、新卒や経験の浅いBPRコンサルタントは年収が約400~600万円程度でスタートし、中堅レベルになると700~1,000万円程度になることが多いです。高い専門性を持ち、長年の経験を積んだシニアレベルのコンサルタントでは、年収1,200万円以上になることも珍しくありません。
大手コンサルティングファームでは、一般的に年収が高めに設定されており、パフォーマンスに応じたボーナスや各種手当が加わることもあります。一方で、中小企業やスタートアップ勤務では、基本給はやや低めでも、成果に応じたインセンティブが大きく影響することがあります。
独立してフリーランスのBPRコンサルタントとして活動する場合、収入はプロジェクトの規模や数、自身の交渉力に大きく左右されます。また、特定の専門分野やニッチな市場での需要が高い場合、年収はさらに高くなる可能性があります。
また、BPRは広範囲で業務量が多いため、チームで対応することが一般的です。ヒアリングや業務フロー作成などのドキュメンテーション中心の役割であれば単価は安い一方で、プロジェクト管理などBPR全体の推進を担う役割であれば高単価になってきます。
関連記事:コンサルタントの単価の決まり方と費用の相場を種類別に解説
BPRコンサルタントに依頼するメリット
企業にとってBPRコンサルタントに依頼することで、社内で取り組みにくい課題にもメスをいれることができるというメリットをお伝えしました。その他にもメリットは様々ありますので、BPRコンサルタントに企業が依頼するメリットについて見ていきましょう。
働く環境が「見える化」できる
BPRを実施する最大のメリットは、組織や働く環境が可視化できることです。
可視化するにあたり、業務フローを作成するのが一般的ですが、業務フローができることで、重複する業務や無駄な作業など生産性を阻害するボトルネックを特定することができます。
それによって、生産性向上のみならず、あまり価値がない業務に多くの時間を割いていることでモチベーションの低下などを招くため、従業員の満足度向上にも繋がってきます。
社内の生産性が向上すれば、サービスや製品の品質が向上し、最終的に顧客満足度という効果を見込むことができます。
外部人材だからこそ打破しやすい場面もある
コンサルティング会社やフリーランスのコンサルタントなどの外部のBPRコンサルタントは、社内単独では解決できない課題を解消するという重要な役割を担います。やはり、BPRは慣れ親しんだプロセスを変えていきますので、社内の反発は必然的に起こります。
社内からの反発を減らし、協力を得られるよう、生産性向上や従業員満足度向上などBPRのメリットを、経営層のみならず従業員にも理解してもらう必要があります。
社内の従業員では、ハレーションなどもあり課題の解消ができなくても、コンサルティング会社やフリーランスのコンサルタントは、外部の人間であるが故に、それができる立場にあります。ただ、社内の従業員の協力が得られないと進めることはできないため、BPRの結果どのようなメリットがあるか、しっかり伝えて理解してもらう必要があります。
現場の協力が得られないと、BPRのとっかかりとしての業務ヒアリングや業務フローの作成なども進みません。現場を味方につけるコミュニケーションスキルもそうですが、BPRの真のメリットをコンサルタント自身が理解して伝えていくことが必要です。
経験や事例を活用できる
経験豊富なBPRコンサルタントは、様々な企業でBPRを手掛けてきているので、多くの成功事例と、場合によっては失敗事例を持ち合わせています。業種業態や企業によって、業務プロセスは異なりますが、類似の課題は出てくるものです。
そうしたときに、これまでの経験や実績に裏付けられた解消法の提案をもらえることがあります。
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BPRを効率化できる
当たり前ですが、社外のBPRコンサルタントを活用することで、社内リソースを使わなくて済むため、期間の短縮を見込むことができます。
そもそも、社内でやろうとした場合、日常業務に加えて実施する形となるため、中々BPRは進みません。
外部のBPRコンサルタントを活用することで、社内の従業員は、ヒアリングや情報提供に協力する程度で、BPRは進んでいくでしょう。
BPRコンサルタントを企業が利用するデメリット
BPRコンサルタントに依頼するメリットがある一方で、費用がかかる等の当然ながらデメリットも存在します。具体的に、どのようなデメリットがあるか、見ていきましょう。
BPRコンサルタントの費用が発生する
デメリットとして真っ先に思いつくのが、BPRコンサルタントに支払う費用が発生することです。BPRコンサルタントの単価は高額ですし、企業の規模によっては、期間・人数の掛け合わせにより相当なコストとなってきます。
BPRの結果、コスト削減が実現できたとしても、BPRコンサルタントへの支払いによってコスト効果がなくなってしまう懸念も出てきます。
BPRの知見・ノウハウが溜まりづらい
次にあげられるのが企業内にノウハウが溜まりにくいことです。これは、BPRに限った話ではないですが、BPRコンサルタントに依頼することで、BPRコンサルタントが大半の活動を実施することとなります。社内にBPRの知見やノウハウが溜まっていかないため、1度限りではなく、継続的にBPRを実施していこうと考えている場合、都度BPRコンサルタントに依頼する必要が出てきます。
成功が保証されない
BPRは、前述した通り、成功率が決して高くはありません。プロフェッショナルであるBPRコンサルタントに頼んだとしても、100%成功する保証はありません。BPRコンサルタントに支払う費用は高額ですので、失敗して効果があまりないとなると費用対効果が見合わなくなってきます。成功確率をあげるためにも、依頼するBPRコンサルタントには、豊富な実績や類似企業での経験があるか、社内での立ち回りが得意か等、しっかり見極める必要があります。
BPRコンサルタントに必要とされるスキル
BPRコンサルタントには、どのようなスキルが求められるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
コミュニケーション能力
BPRコンサルタントは、プロジェクトを進めるにあたり、経営層や現場の協力が得られるよう、BPRのメリットを訴求していくことが必要です。また、業務や組織を可視化するにあたり、現場のヒアリングを実施していきますので、高いコミュニケーション能力が求められます。
ITスキル
BPRを進めるにあたりIT化はセットで考えなければなりません。人手でやっている領域にシステムを導入したり、古いシステムで業務に時間がかかっている領域は新システムに置き換えるといった効率化施策は、何かしら出てきます。
また、各部門で好き勝手システムを導入しており、全社で標準的されておらず、システムを統合化するといったケースも出てきます。更には、業務システムが多数存在していて業務が煩雑化しているような場合、SAPなどのERPパッケージを導入するといった施策が出てくることもあります。
そのような施策が発想として生まれるためにも、BPRコンサルタントには一定のITスキルが求められます。
BPRコンサルタントにおすすめの資格
BPRコンサルタントとして活動するために特定の資格が法的に必須とされているわけではありませんが、専門性を示すために多くのプロフェッショナルが関連資格を取得しています。以下は、業務改善や経営コンサルティングに関連する主な資格です
Lean Six Sigma(リーンシックスシグマ)
- プロセス改善と品質管理のための方法論です。
- ベルト制度(イエロー、グリーン、ブラック、マスターブラック)により、習熟度が証明されます。
CBAP(Certified Business Analysis Professional)
- ビジネス分析の専門家に対する国際的な認定資格です。
- ビジネスニーズの理解と解決策の提案能力が評価されます。
日本生産性本部認定経営コンサルタント
- 公益財団法人の日本生産性本部が提供する資格です。
- 経営全般にわたる知識と問題解決能力が求められます。
大手BPRコンサル会社
BPRコンサルティングを提供する代表的な企業には、外資の大手コンサルティングファームが多く含まれます。それぞれ異なるアプローチや専門分野を持っていますが、共通してBPRにおける深い専門知識と豊富な経験を有しています。
マッキンゼー&カンパニー(McKinsey & Company)
- グローバルに展開するトップクラスの経営コンサルティングファームです。
- 戦略立案から業務プロセスの改革まで、幅広いサービスを提供しています。
アクセンチュア(Accenture)
- テクノロジーを活用したビジネスプロセスの変革に強みを持つ企業です。
- デジタルトランスフォーメーションを含むBPRサービスを提供します。
PwC(プライスウォーターハウスクーパース)
- 会計およびコンサルティングサービスを提供するグローバル企業です。
- 効率的な業務プロセスの構築や組織改革に関するコンサルティングを行っています。
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BPRプロジェクトの進め方
BPRプロジェクトは具体的にどのように進めればいいか見ていきましょう。BPRプロジェクトは、下記の大きく5つのステップで進めるのが一般的です。
(1)業務を可視化する
一番最初に着手するのは業務の可視化となります。既存資料の読み込みやヒアリングにより業務を把握し、業務フローの作成や、各業務に関わる工数や、品質・コストなどを洗い出していく作業を行います。
(2)あるべき姿の定義
次に行うのが本来どうあるべきかの業務の理想像を定義します。定義にあたっては、フレームワークを利用したり、競合他社などの情報を踏まえて実施してきます。
(3)施策の策定
定義したあるべき姿と、現状のギャップをもとに施策を検討し、効果と実現までの時間などを踏まえ施策の優先順位を決定し、施策の実施スケジュールを定めます。
(4)実行
定義した実施スケジュールに沿い、施策を実行していきます。ITシステムの導入は外せない施策として必ず存在し、長期間のプロジェクトとなることも多いです。
(5)検証と見直し
BPRは効果を刈り取って初めて価値が出てきますので、実行した施策が想定通りの効果を生んでいるかは、必ず確認するようにしましょう。仮に効果が出ていない場合は、何が原因か検証し、適宜軌道修正を図っていきましょう。
BPRコンサルタントにとって役立つフレームワーク
BPRプロジェクトでは、フレームワークを使用する場面が多くみられます。良く見られるのが、SWOT分析、MECE、4P分析、STP分析であり、それぞれについて、ご説明させていただきます。
(1)SWOT分析
SWOT分析は、内部要因と外部要因から企業の現状を洗い出すフレームワークで、内部要因として強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)、外部要因としてO(Opportunities)と脅威(Threats)を洗い出していきます。
(2)MECE
MECEとは、Mutually Exclusive and Collective Exhaustiveの略で、日本語で訳すと、「漏れなくダブりなく」という意味になります。BPRでは、業務の洗い出しや、課題の整理などで使用すると非常に有用です。
(3)4P分析
4P分析は、商品(Product)、流通(Place)、価格(Price)、販促(Promotion)といった4つのPを分析するフレームワークで、マーケティング戦略を立案するときに有用です。
(4)STP分析
STP分析は、セグメント化(Segmentation)、ターゲット選定(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の略で、市場を俯瞰して、狙うべき市場およびポジション取りを考えるフレームワークです。企業があるべき姿を定義するにあたり、有用となります。
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BPRコンサルタントは長年の活躍が可能
いかがでしたでしょうか。BPRは、企業の組織や業務プロセスを抜本的に変革するもので、働き方改革やリモートワークなどによる働き方の変化を背景にニーズが高まっています。
社内のしがらみ等により、自社単独でBPRを進めるのは難易度が高く、外部のBPRコンサルタントの依頼も多く、BPRコンサルタントとして長年活躍していくことは可能です。
BPRコンサルタントとして活躍していくためにも、BPRコンサルタントして必要なスキルの習得、求められる役割や進め方をしっかり理解しておくとよいでしょう。
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