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システム要件定義とは?詳しい進め方や要件定義書のポイントを解説

システム要件定義とは?詳しい進め方や要件定義書のポイントを解説
更新日: 2026.07.13

Contents

ITコンサルタントやシステムエンジニアなどの職種は、「システム要件定義」を担うことが多いでしょう。システム要件定義は、新規システムの開発における重要な業務です。この記事では、システム要件定義の進め方やポイント、学習におすすめの本を解説します。

システム要件定義とは

システム要件定義とは、システムを導入する目的や対象範囲を明確にし、その目的を実現するために必要な機能、性能、セキュリティ、データ、外部連携、運用・保守などの条件を具体化する工程です。

発注側の要望をそのまま機能として整理するだけではありません。現在の業務や課題を分析し、システム化する範囲とシステム化しない範囲を見極めたうえで、関係者が合意できる要件に落とし込みます。

要件定義が曖昧なまま設計や開発へ進むと、認識の相違や追加開発、スケジュール遅延、コスト超過につながる可能性があります。そのため、要件定義はシステム開発の成否を左右する重要な上流工程です。

上流工程のうち企画プロセスの次に位置する

システム要件定義は、システム開発における「上流工程」に位置します。システム開発の流れは、次の通りです。

1. 企画プロセス(システム企画)
2. 要件定義
3. 基本設計
4. 詳細設計
5. システムの開発・テストなどの「下流工程」へ

企画プロセスとは、開発するシステムの方向性や予算を検討する工程です。IPAが定義した用語であり、上流工程のさらに上層の「超上流工程」とするケースもあります。

システム要件定義書とは

システム要件定義書とは、発注側と開発側が共同で作成・合意する文書です。

発注側は、システムを導入する目的や解決したい業務課題、必要な業務機能、優先順位などを明確にします。開発側は、発注側の要求を踏まえ、技術的な実現方法や制約、必要な機能・非機能要件を具体化します。

実務では開発側のシステムエンジニアやITコンサルタントが文書作成を主導することもありますが、要件の最終的な確認と意思決定は、発注側を含む関係者が行うことが重要です。

システム要件定義と似ている用語との違い

IT領域には、システム要件定義と近い「ソフトウェア要件定義」や「業務要件定義」といった用語が多数あります。意味を混同しないよう、システム要件定義と似ている用語との違いを理解しておきましょう。

ソフトウェア要件定義とシステム要件定義の違い

ソフトウェア要件定義とは、名前の通りソフトウェアに関する仕様を決めるプロセスです。対するシステム要件定義は、ソフトウェア要件定義も含む工程となります。そもそもソフトウェアとは、開発するシステム上に存在するプログラムです。ゆえにシステム開発では、必要に応じてソフトウェア、ハードウェア、ネットワーク、運用体制などの定義を行います。

業務要件定義とシステム要件定義の違い

業務要件定義とは、システムのユーザーである発注側が、業務で実現したい目標を決める作業です。また、業務の流れも整理します。一方、システム要件定義とは、業務要件を達成するためのシステムを考案する過程です。双方の総称として、「要件定義」とまとめる場合があります。

システム開発における要求定義と要件定義の違い

要求とは、利用者や関係者がシステムや業務に対して求めていることです。「入力作業を減らしたい」「月次集計を早く終わらせたい」といった要望や課題も要求に含まれます。

要件とは、要求を分析し、対象範囲や優先順位、実現可能性などを検討したうえで、関係者間で合意した条件です。

例えば、「入力作業を減らしたい」という要求に対して、「基幹システムから顧客情報を自動連携し、二重入力をなくす」という形まで具体化したものが要件です。

ただし、企業やプロジェクトによっては、要求の整理から要件の確定までをまとめて「要件定義」と呼ぶこともあります。

基本設計・システム方式設計とシステム要件定義の違い

基本設計とシステム方式設計は、要件定義の次に行うプロセスです。基本設計とは、要件定義の内容の実現に必要な基礎システムを、さらに細かく決定する作業になります。システム方式設計は、基本設計の中で最初に行う工程です。システム全体の構成や開発言語といった重要な部分を設計します。

開発手法や導入形態による要件定義の違い

システム要件定義の基本的な考え方は変わりませんが、開発手法や導入するシステムによって進め方は異なります。

従来のウォーターフォール開発では、開発前に要件をできる限り詳細に定義することが一般的でした。一方、近年ではアジャイル開発やSaaS・ERPの導入が増え、要件定義の進め方も変化しています。

それぞれの特徴を理解し、プロジェクトに適した進め方を選択することが重要です。

ウォーターフォール開発における要件定義

ウォーターフォール開発では、要件定義を完了した後に基本設計、詳細設計、開発、テストへと工程を順番に進めます。

そのため、要件定義ではできる限り多くの要件を明確にし、関係者間で十分に合意してから設計工程へ進むことが重要です。

特に大規模な基幹システムや金融・公共システムでは、途中で仕様変更すると影響範囲が大きくなるため、要件定義の品質がプロジェクト全体の成否を左右します。

アジャイル開発における要件定義

アジャイル開発では、最初からすべての要件を確定することはありません。

システム全体の目的や方向性を定めたうえで、優先順位の高い要件から順番に具体化し、短いサイクルで設計・開発・テスト・改善を繰り返します。

そのため、要件定義も一度で終わる工程ではなく、プロジェクトを通じて継続的に見直されます。

例えば、ユーザーからのフィードバックや市場環境の変化を踏まえて、新しい機能を追加したり、不要な機能を削除したりすることも珍しくありません。

アジャイル開発では、要件を細かく分割し、ユーザーストーリーやプロダクトバックログとして管理するケースが多く見られます。

SaaS・ERP導入における要件定義

Salesforce、SAP、ServiceNow、Microsoft Dynamics 365などのSaaSやERPを導入する場合は、スクラッチ開発とは要件定義の考え方が異なります。

スクラッチ開発では業務に合わせてシステムを作ることが基本ですが、SaaSやERPでは標準機能を活用することを前提に要件を整理します。

そのため、まずは現行業務と標準機能との適合度(Fit & Gap)を確認し、「標準機能で対応できるもの」「設定変更で対応できるもの」「追加開発が必要なもの」を整理します。

近年では、ベンダーが提供する標準機能を最大限活用する「Fit to Standard」の考え方が広く採用されています。

業務に合わせてシステムを過度にカスタマイズすると、導入コストや保守コストが増加し、将来的なバージョンアップにも影響するためです。

そのため、要件定義では「システムを業務に合わせる」のではなく、「業務を標準機能に合わせられないか」という視点も重要になります。

クラウド時代の要件定義で重視されるポイント

近年はクラウドサービスの利用が一般的となり、従来以上に非機能要件の重要性が高まっています。

例えば、以下のような観点は早い段階で整理しておく必要があります。

  • 外部システムとのAPI連携
  • シングルサインオン(SSO)やID管理
  • データ保存場所や保持期間
  • 権限管理・アクセス制御
  • ログ管理・監査証跡
  • バックアップ・災害対策
  • セキュリティ対策
  • 将来的な拡張性や他システムとの連携

これらを要件定義の段階で整理しておくことで、設計や開発フェーズでの手戻りを減らし、システム導入後も安定した運用につなげることができます。

プロジェクトに応じた要件定義が重要

要件定義には万能な進め方はありません。

ウォーターフォール開発では詳細な要件定義が重要であり、アジャイル開発では継続的に要件を改善していくことが求められます。また、SaaSやERPの導入では、標準機能を最大限活用するという視点が欠かせません。

開発手法やシステムの特性に応じて最適な進め方を選択することが、プロジェクトを成功へ導くポイントです。

ウォーターフォール開発におけるシステム要件定義の進め方

システム要件定義は、以下7つの手順で進めていきます。

1. 顧客のヒアリング
2. プロジェクトの課題と目標の決定
3. システム要件の定義
4. 機能要件の確認
5. 非機能要件の6大項目の決定
6. プロジェクト内容や進行のすり合わせ
7. 要件定義書の作成と提案

具体的な流れや内容を解説します。

顧客のヒアリング

はじめに、発注側である顧客の業務要件や要求定義を明確にするために、ヒアリングを複数回行います。発注側の担当者だけでなく、システムを利用する予定のユーザーもヒアリングの対象です。顧客のニーズや業務上の問題点、現状のシステム構成、連携しているクラウドサービスなどの情報を聞き出し、データを集めます。

プロジェクトの課題と目標の決定

収集したデータを分析し、プロジェクトの課題および目標を決めます。分析の注意点として、「この業務のこの問題点をこの機能で解決したい」と自覚しているユーザーは稀です。ユーザーの悩みを的確に分析するためには、幅広いIT知識が不可欠でしょう。

システム要件の定義

発注側の要望および業務要件をシステム要件に落とし込み、予算や技術的に実現できる要望・できない要望を洗い出します。開発するシステムの全体像を決定し、「システムの構成」「システムの概要」「システム導入の目的、解決できる課題」などを定義しましょう。

機能要件の確認

発注側の要望を細かく分け、必要な機能を1つずつ確認します。発注側が要求し、システムに必ず搭載する機能を「機能要件」と呼びます。たとえば、システムで処理できる「データの種類」や「帳票作成の自動化」などの機能です。

非機能要件の6大項目の決定

非機能要件とは、システムのうち機能要件以外の条件です。IPA(情報処理推進機構)は、「非機能要求グレード」として、非機能要件を6つの大項目に分類しています(※1)。なお、「操作性」などの項目は含まれていないため、プロジェクトによっては項目の追加が必要です。

拡張・性能要件

拡張・性能要件では、「システムを拡張できるか」や「処理速度などのシステムの性能」を定義します。将来的なユーザーやトラフィック量の増加など、拡張・性能に関わる部分のヒアリングが不可欠です。

可用性の要件

可用性の要件とは、システムを継続的に稼働させるための条件です。システム障害時の対応と復旧フロー、災害時の対応、冗長化といった要件を定めます。

環境・エコロジー要件

環境・エコロジー要件とは、システムの設置・運用に関係する法令、ハードウェアの設置環境を記す要件です。また、エネルギー消費量など、システム運用による自然環境への影響も算出します。

セキュリティ要件

セキュリティ要件は、情報資産の安全性に関する要件です。具体的なセキュリティ対策や守秘義務などの項目を決定します。

移行性の要件

移行性の要件では、既存システムから新システムへの情報資産の移行について明記します。移行方法や移行スケジュール、サポート体制などの条件をすり合わせます。

保守運用の要件

保守運用の要件では、システムを安定して稼働させるための条件を明確にします。データバックアップの対象および頻度、保守運用の方法といった項目を記載します。

※1参照:IPA「システム構築の上流工程強化(非機能要求グレード)紹介ページ」

プロジェクト内容や進行のすり合わせ

続いて、システム開発プロジェクトの計画を立案します。プロジェクトにかかるコストの見積もり、開発メンバーと具体的なタスク、工数などの内容を決定します。加えて、発注側とのコミュニケーションにおけるツールやコミュニケーションの頻度も決めましょう。

要件定義書の作成と提案

システム要件定義の内容を要件定義書にまとめます。要件定義書には、主に次の項目を記載します。

● 発注側の課題とシステム開発の目的
● システム構成
● 機能要件
● 非機能要件
● スケジュール
● 予算の見積もり
● 開発メンバーと役割
● コミュニケーション手段、進捗報告の頻度

作成した要件定義書は顧客に提案し、承認をもらいます。

システム要件定義書の作成のポイント

システム開発を成功させる上で、システム要件定義書の質は重要です。システム要件定義書を作成する際は、下記5つのポイントが大切になります。

1.成果物サンプルや例を参考にする
2.ミス防止にフレームワークを活用する
3.ユーザーの業務やシステムを理解する
4.わからない箇所をそのままにしない
5.内容が伝わりやすい書き方に統一する

順番に注意点を見ていきましょう。

成果物サンプルや例を参考にする

システム要件定義書は、成果物のサンプルや例を参考にすると作成しやすくなります。社内に過去の成果物がある場合、積極的に活用しましょう。また、インターネット上でも実際の成果物の閲覧が可能です。たとえば経済産業省などの成果物があるので、参考にしてみてください。

■成果物の例
機能要件定義書(案)

ミス防止にフレームワークを活用する

記載内容の抜け漏れなどのミスを防ぐため、以下のようなフレームワークの利用がおすすめです。

● 5W2H:情報を効率的に整理する
● エンタープライズアーキテクチャ(EA):発注側のニーズを分析する

要件定義の内容に間違いがあると、実際にシステムを開発する下流工程のスケジュールが圧迫されかねません。品質の低下に繋がるため、ミス防止に努めましょう。

ユーザーの業務やシステムを理解する

発注側のユーザーの業務や既存システムの把握は重要です。ユーザーの業務の流れや使用しているシステム、問題点を把握することで、システムに搭載すべき機能を考案しやすくなります。ユーザーのニーズを理解しないままシステム要件定義書を作成しても、何度も修正が必要になるかもしれません。

わからない箇所をそのままにしない

ヒアリングを行う中で、発注側の業界特有の業務フローや課題を目の当たりにする可能性があります。そうした場面では、わからない点を放置したまま要件定義を進めないようにしましょう。開発段階で問題点が発覚すれば、納期遅れに繋がりかねません。わからない点はあいまいにせず、正確に理解できるようヒアリングを重ねましょう。

内容が伝わりやすい書き方に統一する

システム要件定義書へ記載する際は、難しすぎる言葉や専門用語の多用に注意が必要です。わかりづらい内容だと、合意内容の認識に違いが生じる恐れがあります。発注側も閲覧するドキュメントなので、IT業界以外の人にも伝わるように書きましょう。

生成AIを活用した要件定義

生成AIの普及により、システム要件定義の業務でもAIを活用する機会が増えています。

生成AIは、ヒアリング項目の作成、議事録の整理、要求の分類、要件定義書のたたき台作成など、情報量が多く手間のかかる業務を効率化するうえで有効です。

一方で、生成AIが出力した内容には、事実と異なる情報や、関係者が合意していない要件が含まれる可能性があります。そのため、生成AIは要件を自動的に決定するものではなく、要件定義を支援するツールとして利用することが重要です。

ヒアリング項目を作成する

要件定義の初期段階では、クライアントの業務や課題を把握するために、関係者へのヒアリングを行います。

生成AIに、対象となる業界や業務、導入を検討しているシステムの概要を伝えることで、確認すべき質問項目のたたき台を作成できます。

例えば、販売管理システムの要件定義であれば、以下のような観点を洗い出せます。

  • 現在の受注から請求までの業務フロー
  • 利用者の人数や所属部門
  • 既存システムやExcelで管理している情報
  • 業務上の課題や二重入力の有無
  • 承認フローや権限設定
  • 外部システムとの連携
  • 帳票やレポートの種類
  • 月末や繁忙期の処理件数

生成AIが作成した質問をそのまま使用するのではなく、プロジェクトの目的や対象範囲に合わせて、担当者が内容を追加・修正しましょう。

議事録やヒアリング内容から要求を整理する

ヒアリングや会議の議事録を生成AIに読み込ませることで、関係者から出た要望や課題、決定事項、未決事項を整理できます。

例えば、会議内容を以下のように分類できます。

  • 現在の業務課題
  • 利用者からの要求
  • システムに必要な機能
  • 非機能要件に関する要望
  • 制約条件
  • 決定事項
  • 継続して検討する事項

複数回のヒアリングで出た内容を一覧化し、重複する要求や矛盾している意見を確認する際にも役立ちます。

ただし、生成AIによる要約では、発言の背景や微妙なニュアンスが省略される可能性があります。重要な要件については、元の議事録や発言内容を確認し、関係者に認識の相違がないか確認することが必要です。

要求を要件として具体化する

利用者から挙がる要求は、「業務を効率化したい」「操作を簡単にしたい」「処理を速くしたい」など、抽象的な表現になりがちです。

生成AIを利用すると、抽象的な要求を具体的な要件へ落とし込む際の検討案を作成できます。

例えば、「検索を速くしたい」という要求に対して、以下のような要件案を出すことが可能です。

  • 商品名または商品コードから検索できる
  • 複数の条件を組み合わせて検索できる
  • 通常時は検索結果を3秒以内に表示する
  • 検索結果をCSV形式で出力できる
  • 利用者の権限に応じて表示対象を制御する

このように、生成AIは検討すべき観点を広げる際に役立ちます。ただし、処理時間や件数などの数値は、利用状況や技術的な実現性を確認したうえで決定しなければなりません。

機能要件と非機能要件を分類する

ヒアリングで集めた要求を生成AIに入力し、機能要件と非機能要件に分類することもできます。

機能要件については、以下のような分類が可能です。

  • 画面
  • 入力・登録
  • 検索
  • 承認
  • 帳票
  • 通知
  • 権限管理
  • 外部システム連携

非機能要件については、以下の観点から整理できます。

  • 可用性
  • 性能・拡張性
  • 運用・保守性
  • 移行性
  • セキュリティ
  • システム環境
  • ユーザビリティ
  • アクセシビリティ
  • バックアップ
  • ログ・監視

分類結果をもとに不足している観点を確認することで、要件の抜け漏れを防ぎやすくなります。

業務フローやユースケースのたたき台を作成する

生成AIは、ヒアリング内容から現行業務と新しい業務の流れを文章で整理する際にも活用できます。

例えば、受注業務について以下のような流れを整理できます。

  1. 営業担当者が受注情報を登録する
  2. 営業責任者が内容を承認する
  3. 在庫管理システムへ情報を連携する
  4. 出荷担当者へ通知する
  5. 出荷完了後に請求データを作成する

また、「誰が」「どのような場面で」「何を行うか」というユースケースのたたき台を作成し、必要な画面や機能を検討することも可能です。

ただし、生成AIが作成した業務フローは、実際の業務を正確に表しているとは限りません。現場担当者に確認し、例外処理や部門ごとの差異も含めて修正する必要があります。

要件の抜け漏れや矛盾を確認する

作成した要件一覧を生成AIに読み込ませ、抜け漏れや矛盾の可能性を確認することもできます。

例えば、以下のような点を確認できます。

  • 登録機能はあるが、変更・削除機能が定義されていない
  • 承認フローはあるが、差し戻し時の処理が決まっていない
  • 外部連携機能はあるが、連携エラー時の対応が未定である
  • 権限管理の要件と閲覧範囲の要件が矛盾している
  • 通常時の処理性能はあるが、繁忙期の性能要件がない
  • データの保存期間や削除方法が決まっていない

生成AIによるレビューは、担当者が気づかなかった論点を発見する補助として利用できます。ただし、最終的なレビューは、業務担当者やエンジニア、セキュリティ担当者などが実施しましょう。

受入条件やテスト観点を作成する

要件を満たしているか確認するためには、受入条件を明確にする必要があります。

生成AIを活用すると、各要件に対する受入条件やテスト観点のたたき台を作成できます。

例えば、「申請内容を上長が承認できる」という要件であれば、以下のような観点が考えられます。

  • 申請者が申請を登録できる
  • 指定された承認者へ通知される
  • 承認者が承認または差し戻しを選択できる
  • 承認日時と承認者が記録される
  • 権限のない利用者は承認できない
  • 差し戻し時に申請者へ理由が通知される

設計やテストの工程を見据えて要件を具体化することで、完成後の認識の相違を防ぎやすくなります。

要件定義書の表現や用語を統一する

要件定義書を複数人で作成すると、同じ意味の用語が異なる表現で記載されることがあります。

生成AIを利用すれば、文体や用語、見出し、箇条書きの形式を統一できます。また、曖昧な表現や専門用語を洗い出し、発注側にも伝わりやすい文章へ修正することも可能です。

ただし、文章を読みやすく整える過程で、要件の意味が変わってしまう場合があります。修正前後を比較し、合意済みの内容が維持されているか確認しましょう。

生成AIを利用する際の注意点

生成AIを要件定義に利用する際は、次の点に注意が必要です。

機密情報や個人情報を安易に入力しない

要件定義では、クライアントの業務情報、顧客情報、システム構成、セキュリティ情報などを扱います。

利用が許可されていない生成AIサービスへ機密情報や個人情報を入力すると、情報漏えいにつながるおそれがあります。利用するサービスや入力できる情報の範囲について、クライアントや自社のルールを事前に確認しましょう。

必要に応じて、企業向けの生成AI環境を利用する、情報を匿名化する、固有名詞や数値を置き換えるといった対策も必要です。

AIの出力をそのまま要件にしない

生成AIは、入力されていない情報を推測して補ったり、事実ではない内容を出力したりすることがあります。

生成AIが作成した要件はあくまで案として扱い、業務上の必要性、技術的な実現性、費用、スケジュールなどを人が確認しなければなりません。

最終的な判断と合意は人が行う

要件定義は、複数の関係者が要求や制約を確認し、対象範囲や優先順位について合意する工程です。

生成AIは情報の整理や検討を支援できますが、関係者間の調整や意思決定を代替することはできません。最終的な要件は、発注側と開発側が内容を確認し、合意したうえで確定します。

利用した内容と変更履歴を管理する

生成AIが作成した文章を要件定義書に反映する場合は、誰が内容を確認したのか、どのような修正を行ったのかを記録しておくことが重要です。

通常の要件と同様に、識別番号、作成者、確認者、変更日、変更理由などを管理し、後から経緯を確認できるようにしましょう。

生成AIは要件定義の効率と品質を高める補助ツール

生成AIを活用すれば、ヒアリング準備や議事録整理、要件の分類、レビューなどにかかる時間を短縮できます。また、さまざまな観点から要件を確認することで、抜け漏れの防止にも役立ちます。

一方で、システムを導入する目的や業務の実態、関係者の意図を正確に理解し、実現可能な要件として合意する役割は、引き続き人が担います。

生成AIの出力をそのまま採用するのではなく、ITコンサルタントやシステムエンジニアの知識・経験と組み合わせて活用することが、要件定義の効率と品質を高めるポイントです。

システム要件定義の業務に役立つスキルや資格

システム要件定義を担当する場合、次の3つのスキルや資格があると役立ちます。

1. システム開発やIT関連の知識・経験
2. コミュニケーション力・マネジメント力
3. 「ITパスポート」「基本情報技術者試験」などのIPA系資格

それぞれの必要性を説明します。

システム開発やIT関連の知識・経験

システム要件定義を進める上で、システム開発やIT関連の知識は必須のスキルと言えます。「発注側のどの要望を実現できるか」「このシステムに必要な非機能要件はどれか」といった判断をするためには、エンジニアとしての高度な知識が必要です。また、プログラミングや保守運用などの実務経験があれば、さらに業務を進めやすいでしょう。

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コミュニケーション力・マネジメント力

発注側の潜在的なニーズを引き出すためには、論理的かつ柔軟なコミュニケーション能力が求められます。難解なIT用語をわかりやすく伝える際にも役立つでしょう。さらに、開発メンバーのタスクや技術の把握、トラブル時の対応、進捗管理といった場面では、プロジェクトに対するマネジメント力が重要になります。

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「ITパスポート」「基本情報技術者試験」などのIPA系資格

ITパスポート」「基本情報技術者試験」などのIPA系資格は、勉強する過程で知識を身につけられます。たとえば、ITパスポートの過去の試験では「システム要件定義で明確にするもののうち性能に関する要件はどれか」と出題されました。ITの基礎知識から身につけたい場合、資格勉強を活用して効率的に学習できるでしょう。

関連記事:フリーランスコンサルタントの独立準備は何が必要?貯金は?年収は?

システム要件定義の勉強におすすめの本

システム要件定義についてこれから学びたい人に向けて、おすすめの良書を3つ紹介します。

1. はじめよう! 要件定義 ~ビギナーからベテランまで
2. 図解即戦力 要件定義のセオリーと実践方法がこれ1冊でしっかりわかる教科書
3. 演習で身につく要件定義の実践テクニック

それぞれの内容を簡潔に解説します。

はじめよう! 要件定義 ~ビギナーからベテランまで

はじめよう! 要件定義」は、初心者向けの指南書です。要件定義の最初から最後までの過程を噛み砕いて解説しています。要件定義における重要なポイントがまとまっているので、まずは全体像を理解したい人に適しています。

図解即戦力 要件定義のセオリーと実践方法がこれ1冊でしっかりわかる教科書

図解即戦力 要件定義のセオリーと実践方法がこれ1冊でしっかりわかる教科書」は、図による見やすい解説が特徴的です。「はじめよう! 要件定義」と同じく、要件定義について一から学びたい人におすすめできます。

演習で身につく要件定義の実践テクニック

演習で身につく要件定義の実践テクニック」は、システム開発の演習問題を通し、要件定義を体系的に理解を深められます。中・上級者向けの書籍であり、実務にも応用できる内容が多いと高く評価されています。

システム要件定義に関するよくある質問

最後に、システム要件定義のよくある疑問点をまとめます。

1. システム要件定義書は誰が作る?
2. 機能要件と非機能要件の違いをわかりやすく教えて
3. システム要件定義書のフォーマットはExcelでも良い?
4. システム要件定義書と仕様書は同じ?
5. システム要件定義書を英語で作るケースはある?

1つずつ説明します。

システム要件定義書は誰が作る?

一般的に、システム要件定義書は開発側のシステムエンジニアが作成します。発注側が作るケースは少なく、開発側がヒアリングの内容をもとに定義をすり合わせていきます。

機能要件と非機能要件の違いをわかりやすく教えて

機能要件とは、発注側が要望し、実装する機能です。例として「ドキュメントの検索機能」「ユーザー単位のアクセス制御」などの機能が挙げられます。対する非機能要件は、発注側が望む機能以外の項目です。拡張性やセキュリティといったシステムに欠かせない要素を決定します。

システム要件定義書のフォーマットはExcelでも良い?

社内で許可されていれば、システム要件定義書のフォーマットはExcelでも良いです。PowerPointも可能です。閲覧や共有がしやすいフォーマットであれば問題ありません。

システム要件定義書と仕様書は同じ?

システム要件定義書と仕様書は異なる文書です。システム要件定義書はシステムの条件を記しており、開発が始まる前に作成します。仕様書はシステムの開発段階に作り、エンジニアのためにシステムについてさらに詳しく記載します。

システム要件定義書を英語で作るケースはある?

在籍する企業によりますが、クライアントが海外企業であれば英語でシステム要件定義書を作成する可能性があります。国内向けの企業の場合、英語を用いる可能性は極めて低いです。

システム要件定義とは?まとめ

システム要件定義は、ITシステム開発の成功に不可欠な上流工程であり、機能要件や非機能要件の明確化を通じてプロジェクトの成功を導きます。この過程では、顧客ヒアリングから要件定義書の作成まで、多角的なアプローチが求められます。また、システム要件定義書は、開発と発注双方にとって重要なドキュメントであるため、明瞭で理解しやすい内容が必須です。IT関連の知識やコミュニケーション、マネジメントスキルが要件定義業務を支え、これらのスキルは関連資格や書籍を通じて身に付けることができます。この記事では、システム要件定義の基礎から応用までを包括的に解説し、関連するスキルや知識の向上に役立つ情報を提供しました。

関連記事:フリーランスのコンサルタント向けマッチングエージェントはどのようなサービス?

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濱口 浩平
濱口 浩平

監修者

濱口 浩平

Shine Craft株式会社 代表取締役

  • ・2008年野村総合研究所入社、外資コンサルティングファームを経て、2015年よりフリーコンサルタントして活動開始。これまで、IT戦略、DX推進、新規事業策定、PMO、システム導入など幅広いプロジェクトを経験。
  • ・2022年Shine Craftを共同創業
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