近年、企業のDX推進や生成AIの活用、クラウド移行、サイバーセキュリティ強化などを背景に、SIerの役割は大きく変化しています。従来のシステム開発だけでなく、IT戦略の立案からクラウド・AI導入、運用改善まで担うケースも増えており、高度なIT人材への需要は年々高まっています。本記事では、SIerの仕事内容や種類、主要企業ランキング、平均年収、売上高、将来性などを最新情報をもとに解説します。

Slerとは

「Sler」とは、システムインテグレーター(System Integrator)の略で、ITシステムを構築・導入する専門家やその企業を指します。ITシステムは、一つの製品やサービスだけで構成されるものではなく、多数の部品やソフトウェアが連携して動作する複雑なものです。Slerは、これらの部品を統合し、クライアントが求める要件に応じたシステムを構築します。
関連記事:SIerとITコンサルの違いとは? 業務内容やスキル・年収・転職のポイントを解説
SIerの仕事内容
SIerの仕事は、企業や官公庁が抱える課題をITの力で解決することです。単にシステムを開発するだけではなく、経営課題や業務課題を整理し、最適なシステムやIT基盤を企画・設計・構築・運用まで一貫して支援します。
近年は、DX(デジタルトランスフォーメーション)や生成AI、クラウドサービスの普及により、従来のシステム開発に加えて、AI活用やデータ分析基盤の構築、クラウド移行、サイバーセキュリティ対策など、支援領域は大きく広がっています。
SIerが担当する主な業務は次のとおりです。
1.IT戦略・システム化構想の策定
2.要件定義・業務分析
3.システム設計・開発
4.インフラ・クラウド環境の構築
5.テスト・導入・教育
6.システム運用・保守
7.DX・AI・データ活用の推進
それぞれの仕事内容を詳しく見ていきましょう。
1. IT戦略・システム化構想の策定
企業の経営戦略や事業計画を踏まえ、どのようなITシステムを導入すべきかを検討します。現状業務の分析や課題整理を行い、中長期的なITロードマップやDX戦略を策定することも重要な役割です。
2. 要件定義・業務分析
クライアントへのヒアリングを通じて、現行業務や課題を整理し、新しいシステムに必要な機能や要件を定義します。システム開発全体の品質を左右する重要な工程であり、業務知識やコミュニケーション能力が求められます。
3. システム設計・開発
要件定義をもとにシステムの基本設計・詳細設計を行い、プログラミングや各種機能の開発を進めます。近年はアジャイル開発やローコード・ノーコード開発を採用するプロジェクトも増えています。
4. インフラ・クラウド環境の構築
サーバーやネットワークなどのITインフラを設計・構築します。オンプレミスだけでなく、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウドサービスを活用したシステム構築やクラウド移行案件も増加しています。
5. テスト・導入・教育
開発したシステムが仕様どおりに動作するかを検証し、本番環境へ導入します。導入後はユーザー向けのマニュアル作成や教育、操作説明会などを実施し、円滑な定着を支援します。
6. システム運用・保守
システム稼働後も、障害対応や機能改善、セキュリティアップデート、パフォーマンス改善などを継続的に実施します。企業のIT基盤を安定して運用するために欠かせない業務です。
7. DX・AI・データ活用の推進
近年は、生成AIの活用、データ分析基盤の構築、ERPやCRMの導入、業務自動化(RPA)、IoTなど、企業のDX推進を支援する案件が増えています。SIerには、最新技術を活用しながら業務改革や新たなビジネス価値の創出を支援する役割も期待されています。
Slerの種類
Slerにはいくつかの種類があり、それぞれが異なる特徴や強みを持っています。
独立系Sler
独立系Slerは、特定のハードウェアやソフトウェアメーカーとの縛りがないため、多様な技術や製品を組み合わせてシステムを構築することが可能です。このため、クライアントの要件に柔軟に応えることができるという強みを持っています。
独立系Slerの代表企業:オービック、大塚商会、ネットワンシステムズ
ユーザー系Sler
ユーザー系Slerは、特定の企業や業界のニーズに特化してシステムの提供を行うSlerです。彼らは、その業界独特の要件や課題を深く理解しているため、業界特有のシステムを効果的に構築することができます。
ユーザー系Slerの代表企業:野村総合研究所、電通総研、伊藤忠テクノソリューションズ
メーカー系Sler
メーカー系Slerは、特定のハードウェアやソフトウェアメーカーと密接な関係を持ち、その製品を中心としたシステムの提供を行います。一貫した製品ラインナップとその深い知識を活かし、安定したシステムの提供が可能です。
外資系Sler
外資系Slerは、日本国外の大手Slerのことです。多国籍のノウハウや先進的な技術を持っており、グローバルな視点でのシステム構築が可能です。
外資系Slerの代表企業:日本オラクル、SAPジャパン、デロイト・トーマツ・コンサルティング
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国内Sler平均年収ランキング

国内のSIerは企業によって年収水準が大きく異なります。特にコンサルティング機能を持つSIerや、自社サービスを展開する企業は年収水準が高い傾向があります。
ここでは、有価証券報告書などの公開情報をもとに、高年収で知られる代表的なSIerを紹介します。
| 順位 | 企業名 | 平均年収(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 1 | 野村総合研究所(NRI) | 約1,250〜1,300万円 | コンサルティング・金融・DXに強み |
| 2 | 電通総研 | 約1,100〜1,200万円 | DX・製造・金融・データ活用 |
| 3 | オービック | 約1,000〜1,100万円 | ERP・基幹システムに強み |
| 4 | 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC) | 約1,050万円前後 | クラウド・AI・インフラ・セキュリティ |
| 5 | SCSK | 約900〜1,000万円 | 製造・金融・ERP・クラウド |
※平均年収は各社の有価証券報告書など公開情報をもとにした概算です。
1. 野村総合研究所(NRI)
野村総合研究所は、日本を代表するコンサルティングファーム兼SIerです。経営コンサルティングからシステム企画・開発・運用まで一貫して提供しており、金融業界や公共分野で高いシェアを持っています。
近年はAIやデータ分析、クラウド、サイバーセキュリティ、DX戦略などの領域にも注力しており、上流工程を担当する機会が多いことから、高い年収水準を維持しています。
2. 電通総研
2024年に電通国際情報サービス(ISID)から社名変更したSIerです。
製造業や金融業向けシステム開発に加え、ERP、PLM、CAE、データ分析、AIなど幅広いソリューションを提供しています。電通グループのマーケティング領域とITを組み合わせたDX支援も特徴です。
3. オービック
オービックは、ERP・基幹業務システムを強みとする独立系SIerです。
販売・会計・人事給与・生産管理など企業の基幹システムを自社開発しており、企画・導入・保守まで一貫して提供しています。
高収益体質で知られており、国内SIerの中でもトップクラスの利益率と給与水準を維持しています。
4. 伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)
CTCは伊藤忠商事グループの総合SIerです。
クラウド、ネットワーク、AI、データ分析、セキュリティ、生成AI、マルチクラウド環境の構築など、先端技術を活用したDX案件を多数手掛けています。
金融・製造・通信・流通・公共など幅広い業界に対応しており、大規模プロジェクトのPM・PMO案件も豊富です。
5. SCSK
SCSKは住友商事グループの総合SIerです。
ERP導入、クラウド移行、システム開発、ITインフラ、BPOなど幅広いサービスを提供しており、製造・流通・金融業界を中心に豊富な導入実績があります。
「働きやすいSIer」としても知られており、高い給与水準とワークライフバランスを両立している企業として人気があります。
国内Sler企業売上ランキング

国内のSIer業界には、システム開発だけでなく、ITコンサルティングやクラウド、AI、セキュリティ、運用保守まで幅広いサービスを提供する企業が多数存在します。
ここでは、公開されている有価証券報告書などをもとに、国内を代表するITサービス企業・SIerの売上収益規模を紹介します。
| 順位 | 企業名 | 売上収益(目安) |
|---|---|---|
| 1 | 富士通 | 約3.5兆円 |
| 2 | NEC | 約3.5兆円 |
| 3 | NTTデータグループ | 約4.6兆円 |
| 4 | 日立製作所(デジタルシステム&サービス中心) | 約9兆円(連結) |
| 5 | 野村総合研究所(NRI) | 約8,000億円 |
※各社の連結決算ベース(直近有価証券報告書等)を参考。
1. 富士通
富士通は、日本を代表する総合ICT企業です。コンサルティングからシステム開発、クラウド、AI、データ分析、サイバーセキュリティまで幅広いサービスを提供しています。
近年は「Fujitsu Uvance」を中心に、GX・SX・DXを推進するソリューションへ注力しており、製造・金融・公共・流通など幅広い業界のデジタル変革を支援しています。
2. NEC
NECは、公共・通信・金融分野に強みを持つ国内有数のITサービス企業です。
AI、生体認証、ネットワーク、クラウド、セキュリティなど先端技術への投資を進めており、行政DXや社会インフラのデジタル化を数多く手掛けています。
3. NTTデータグループ
NTTデータグループは、日本最大級のITサービス企業です。
コンサルティングからシステム開発、運用保守までワンストップで提供しており、金融・公共・製造・ヘルスケア・通信など幅広い業界を支援しています。
海外売上比率も高く、世界50カ国以上で事業を展開するグローバルSIerとして成長を続けています。
4. 日立製作所
日立製作所は、IT・OT(制御技術)・プロダクトを組み合わせた「社会イノベーション事業」を推進しています。
AI・IoT・クラウドを活用したデジタルソリューション「Lumada」を中心に、製造業、鉄道、電力、医療など幅広い分野でDXを支援しています。
※日立は総合電機メーカーですが、ITサービス事業も国内トップクラスの規模を誇ります。
5. 野村総合研究所(NRI)
野村総合研究所は、コンサルティングとITソリューションを両輪で提供する国内有数のSIerです。
金融システムに強みを持つほか、DX戦略、AI活用、データ分析、クラウド、セキュリティなど上流工程から運用まで一貫して支援しています。高い利益率と平均年収でも知られています。
Sler企業を選ぶポイント

SIer企業へ就職・転職する際は、企業規模や知名度だけでなく、どのようなプロジェクトに携われるか、どのようなスキルを身に付けられるかという観点で選ぶことが重要です。ここでは、SIer企業を選ぶ際に確認しておきたいポイントを紹介します。
必要な技術や知識
担当する工程によって求められるスキルは異なります。要件定義やIT戦略、DX推進などの上流工程では、業務知識やコミュニケーション能力、プロジェクトマネジメントスキルが重要です。一方、設計・開発工程では、プログラミングやクラウド、ネットワーク、データベースなどの技術に加え、近年ではAIやデータ活用に関する知見も求められています。
また、ユーザー系SIerは金融・製造・流通など親会社の業界に強みを持つケースが多く、メーカー系SIerは自社製品やインフラ領域、独立系SIerは幅広い業界・技術に携われる傾向があります。
プロジェクトの規模や内容
携わるプロジェクトの規模や内容も、キャリア形成に大きく影響します。大規模プロジェクトでは、基幹システム刷新やERP導入、クラウド移行など長期間にわたる案件が多く、品質管理や大規模プロジェクトマネジメントの経験を積めます。
一方、中小規模のプロジェクトでは、生成AIやクラウドネイティブ技術など最新技術を活用する機会が多く、幅広い業務を経験しやすい点が特徴です。将来どのようなエンジニア・コンサルタントを目指したいかを踏まえて、自分に合った企業を選びましょう。
上流工程・DX案件の豊富さ
近年は、システム開発だけでなく、DX推進や業務改革(BPR)、IT戦略立案などの上流工程を担当できる人材の需要が高まっています。将来的にITコンサルタントやPM・PMO、フリーランスとして活躍したい方は、顧客と直接やり取りしながらプロジェクトを推進できる環境があるかも確認しておくとよいでしょう。
クラウド・AI案件の有無
AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウド技術や、生成AI、データ分析、サイバーセキュリティなどの案件を多く手掛けるSIerでは、市場価値の高いスキルを身に付けやすくなります。今後もこれらの分野への投資は拡大すると予想されるため、最新技術に携われる環境かどうかも重要な判断基準です。
働き方・キャリアパス
リモートワーク制度やフレックスタイム制度、資格取得支援、研修制度なども確認しておきたいポイントです。また、開発エンジニアからPM・PMO、ITコンサルタント、アーキテクトなど、多様なキャリアパスが用意されている企業であれば、長期的なキャリア形成にもつながります。
SIerの将来性

Sler企業のこれからはどうなって行くのでしょうか?
生成AI・AIエージェントの活用
- 生成AIの普及により、多くの企業が業務効率化や顧客対応の高度化に取り組んでいます。SIerには、生成AIを活用したシステム開発やAIエージェントの導入、RAG環境の構築、社内ナレッジの活用基盤整備など、新たな役割が求められています。
デジタル変革の推進
- 現代の企業は、デジタル技術を利用したビジネス変革を進めています。IoT、AI、クラウドサービスなどの新しい技術を組み込んだ情報システムの構築・運用が求められるため、SIerの役割は今後も増していくでしょう。
セキュリティの重要性
- サイバー攻撃や情報漏洩のリスクが高まる中、企業の情報セキュリティ対策はより専門的な知識と技術が求められるようになっています。SIerはセキュリティ対策の専門家としての役割も担っています。
DX (Digital Transformation) の進展
- ビジネスのデジタル化が進む中、企業の経営戦略とIT戦略の一体化が進んでいます。SIerは、技術的な実装だけでなく、ビジネスサイドとの連携を強化し、DXの実現をサポートする役割が期待されます。
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クラウド移行の加速
- 企業がオンプレミスのシステムからクラウドへの移行を進める中、SIerは移行支援やクラウド上でのシステム構築の要となります。
地域社会との連携
- スマートシティや地域のデジタル化を進めるプロジェクトに、SIerが参画するケースが増えています。地域社会との連携を強化することで、新しいビジネスチャンスを探ることも可能です。
競争の激化
- ITの専門性が高まる一方で、SIer企業間の競争も激化しています。価格競争、技術力、提案力などで差別化を図ることが重要となっています。
グローバル展開の機会
- 国際的なビジネス展開を進める企業が増える中、SIerも海外展開の機会が増えています。グローバルな視点でのシステム構築や運用のノウハウが求められることもあります。
SIerの業界はITの発展とともに新しい可能性が広がっていますが、技術の進化や市場環境の変動に柔軟に対応する必要があるでしょう。
SIerのキャリアパス

SIerでのキャリアパスは多岐にわたります。個人の専門性や興味、能力によってさまざまなキャリアを築くことができます。一般的なSIerのキャリアパスをあげてみましょう。
プログラマー / システムエンジニア (SE)
- 初期のキャリアとして、システムの設計やプログラムの実装、テストを担当します。
- テクニカルスキルや業務知識を深めることが重要です。
プロジェクトリーダー / プロジェクトマネージャー
- ある程度の経験を積んだ後、プロジェクトのマネジメントやリーダーシップを担います。
- チームの進捗管理やクライアントとのコミュニケーション、リスク管理などの役割が求められます。
システムコンサルタント
- 顧客のビジネス課題を理解し、最適なシステムソリューションを提案する役割です。
- ビジネス知識とテクニカルスキルの両方が必要とされます。
アーキテクト
- 大規模なシステムの設計や、新しい技術の適用をリードします。
- 高度な専門知識や技術的な深みが求められるキャリアです。
クラウド・AIスペシャリスト
- AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウド技術や、生成AI、データ分析、サイバーセキュリティの専門家です。
- 高い専門性を身に付けることで市場価値の向上につながります。
セールス / 営業
- 新規の案件を獲得するための役割です。SIerのサービスやソリューションの価値を顧客に伝え、信頼関係を築くことが重要です。
専門職(セキュリティエキスパート、データアナリストなど)
- 特定の領域での専門性を活かし、その分野でのリーダーシップをとる役割です。
経営層 / マネジメント
- 会社や部門の経営や方針の決定に関わるポジションです。
- 長い経験と広範な知識、リーダーシップ能力が求められます。
独立 / 起業
- 一定の経験やスキルを持った後、フリーランスとして独立することも考えられます。または自らの会社を立ち上げることも選択肢としてあります。
これらのキャリアパスの中で、個人の興味や長所、短所を理解し、自分に合った道を選択することが大切です。また、SIerの業界は技術の進化が速いため、常に最新の技術やトレンドを学び続ける姿勢が求められます。
SIer企業ランキング/平均年収、企業売上高をそれぞれ徹底分析!まとめ

いかがでしたでしょうか?このIT業界が盛り上がっていくなかで、Sler企業はこれからも成長していく傾向にあると考えられます。
さらに収入も高い傾向にあります。またSler企業でさまざまな経験しスキルアップしていくことにより
起業も視野にいれることが可能ではないでしょうか?
関連記事:フリーランスコンサルタントの独立メリット・デメリットは?経費や税金は?
フリーランスのコンサルタントはTHE CONSULへの登録がお勧め
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